【阪神新コーチに聞く・井上ヘッドコーチ(下)】G倒に欠けていた緊張感、個々の仕事に強い自覚を

[ 2020年11月25日 08:00 ]

<阪神 秋季キャンプ>江越(左)に声をかける井上ヘッドコーチ(右)=撮影・平嶋理子
Photo By スポニチ

 阪神・井上一樹ヘッドコーチ(49)のインタビュー2回目。今季は打撃コーチとして3番を固定できずに苦しんだことを述懐しつつ、来季はヘッドコーチとしてリーグ2連覇の巨人にどう立ち向かっていくかを語った。

 ――来季、優勝するためには打倒・巨人が必須。今季8勝16敗と負け越したが、1年間ベンチから見ていて、井上コーチが感じた巨人の印象、強さとは。
 「巨人は幹がしっかりしていて、そこに付随する枝、葉という部分が、自分たちの仕事が何なのかというものを、分かっていると感じた。ベンチに座っている選手たちはみんな『俺もスタメンで出たい、頭から出たい』と思っている。どこのチームもそうだ。ただ巨人に関して言えば『この場面は誰々が登板』『守備固め』『走塁』というようにパーツとして『俺はコレを仕事としてやっている』という強い自覚がある。これが違いかなと。阪神も『守備固め』『代打』『走塁』などと考えていると思うが、巨人の選手は、その自覚がより強い。練習量では大差はないが、ある意味、常に緊張感を持って練習しているということが8勝16敗という数字につながってしまったかなと感じる。あとは原監督は選手を信頼してサインを出しているように信頼関係が強い。ウチの選手たちも監督が『この選手なら大丈夫』という風に、サインを出せる信頼関係を築いていかないといけないと思う」

 ――巨人は3、4、5番の中軸がしっかりしていた。一方、今季の阪神は大山が4番として独り立ちも、3番が固定できなかった。
 「確かに今季は3番に苦労した。できることなら21年シーズンはオーダーを組むときに1番・近本、4番・大山、そして3番に誰々というように1、3、4番というところは、スターティングメンバーの名前を書くところに印刷されているくらいの選手を、こちら側も作っていかないといけない。そういったものができるようになれば、またグッとチーム力が上がるような気がしている。そこが(来季に向けた)課題になるでしょう」

 ――巨人・元木ヘッドとは同学年。同じ役職で意識する部分などはあるか。
 「僕は元木と同い年で、もちろんそれは知っている。元木は原監督に認められてヘッドコーチをしているわけだから『すげえな』とも思っている。たぶん他のコーチにないものを元木ヘッドは持っていると思う。原監督の中に『元木なら信頼できる』というのを作り上げたからこそだと思う。だから僕は僕で、監督がチームの長ではあるもののコーチ、スタッフ、選手に対し、くまなく目配り気配りすることで、チームを支えるという部分も大事にしないといけないと思っている。ベンチワークの『ああいう動き、働きをしているのか』というのは僕もなったばかりなので、それは来季が始まったときに。相手ベンチの動き、練習風景、たとえば新聞に出ているコメントなども意識して。いい意味で張り合っていけたらと思う」

 ――巨人との差は緊張感の違いと話した。今秋の練習や、来春キャンプでの具体的な改善策は考えているか。
 「今(秋季練習に)いる人数がすごく少ないので、やっぱり投内連係や守備練習でも連係というところでね。すべての人数を抱えて練習ができないという事情を考慮すれば、本格的には春になる。ただ、たとえば『イッツ・ショータイム』と楽しんでやるというのが阪神のモットーではあるが、練習の中ではメリハリの利いたことをやろうぜと。内外野の連係、内野の連係、投内連係に関しては『失敗したエヘヘ』と言っているんじゃねえぞ、という話はしてある。投手も失敗したまま次の選手にバトン…はなし。自分が失敗したら『もう一丁お願いします』という気持ち、これ以上、失敗してはいけないという緊張感を持てと言っている。そういうことを今、下地に作って、春から本格的にいっちゃうよと。今ここにいるメンバーが春のキャンプが始まるとき、今いないメンバーに緊張感というものを伝授しろと。そういう基盤を作れ、というのは言っている」

 ――打撃コーチから変わっても『コミュニケーション・モンスター』は変わらないか。
 「まあ、そうだね。たとえば今、一番、モチベーションを上げて意識を高めて取り組むべき練習は何かというと阪神の場合は守備。失策数が多いということを考えれば、そちらの方のコミュニケーション、言葉の交わし方というのがすごく大事になる。そこでやっぱりコミュニケーション能力的なもので、みんなを上げさせる。それを意識するなら、やっぱり走攻守すべてにおいて『コミュニケーション・モンスター』になっていかないといけないかなと思う」

 ――守備にも積極的にアドバイスするか。
 「立場が変わったからといって、打撃のことをまったくノータッチにするわけではないし、かといって守備のことは自分が分からないから守備コーチに任せます、というのもなしだと思っている。最終的にチームが強くなるために、エラーを少なくして最少失点で、打線が点をたくさん取るという野球を作るためには、自分が思うことも言いたいし、みんなが思っていることも聞きたい。そういうところは、すごく意識をしたいと思っている」
(終わり)

 ◆井上 一樹(いのうえ・かずき)1971年(昭46)7月25日生まれ、鹿児島県出身の49歳。鹿児島商から89年ドラフト2位で投手として中日入りし、94年に外野手転向。99年は開幕戦から21試合連続安打などで11年ぶりのリーグ優勝に貢献。1軍通算1215試合、打率・275、79本塁打、349打点、13盗塁。09年引退後は10年から13年に中日でコーチ、2軍監督を歴任し、20年は阪神で打撃コーチ。1メートル84、93キロ。左投げ左打ち。

続きを表示

2020年11月25日のニュース