聖光学院時代を取材 記者が見た「歳内という男」 腫れ上がった右手の指にねじ込んだ白球

[ 2020年9月17日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト3―2DeNA ( 2020年9月16日    神宮 )

<ヤ・D>ベンチで高津監督(中央)に声をかけられる歳内(左)(撮影・島崎忠彦)
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 【Hero's File】衝撃の告白を聞いた。阪神入団から間もない頃。歳内と聖光学院時代の11年夏の甲子園について雑談すると「あの時、骨折れてましたからね。今思えばよく投げましたよ」。あっけらかんとした表情で明かされた。

 東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県の代表校。日南学園との1回戦でいきなり16奪三振で勝利したが、7回に打球が当たった右手の人さし指の付け根は試合後に大きく腫れ上がった。斎藤智也監督に「右手が壊れてもいいので、投げさせてください」と直訴し、中5日で金沢との2回戦も先発。14三振と力投したが、2―4で敗れ「自分のせいで負けた…」と号泣した。

 あの夏、歳内は激痛に耐えながら指の間に何度も白球をねじ込み、2試合で計30三振を奪った。「震災で大変な思いをしている人がたくさんいた。優勝して福島に帰ると決めていたので、負けるわけにはいかなかった」と振り返る。

 感情を表に出すタイプではないが、責任感は強く、絶対に弱音も吐かない。白星は付かなかったが、野球人生の新たなスタート。これからも応援したい。 (08~11年福島支局・重光晋太郎)

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2020年9月17日のニュース