オリックス 山口和男スカウトの“うれしい誤算”――胸ときめく出会い、縁を信じて

[ 2019年10月21日 10:30 ]

オリックス・山本由伸
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 10月17日のドラフト会議で、オリックスは育成選手も含めて13人を指名した。高校生8人、社会人選手ゼロ。育成に舵を切る象徴的なドラフト補強となった。もちろん、舞台裏では他球団との読み合いの末「獲った」「獲られた」と悲喜交々の感情が入り交じった。未来のスター選手を発掘する運命の一日だ。当然、スカウトも力が入る。3年前のあの日も、そんな一日だった―。

 当時、九州地区担当だったオリックスの山口和男スカウトは、胸の鼓動を抑えきれなかった。絶対に欲しい。「投手として必要なものを全て持っていた。フォームやバランス、球質、ベース盤の強さ…。高校生なのに、もう1軍半レベルの力は持っていると、僕は思いましたね」。絶対に欲しい。いや、獲らなければ。何度も「山本由伸」の顔が頭に浮かんできた。「2巡目くらいで行ってほしい。4巡目では、いないかもしれません」。スカウト会議で訴えたことも、今は良き思い出となっている。

 2月に都城高校のブルペンで見たときから、確信めいた衝撃があったという。そこからは試合で見る度に確信に変わっていった。欲しい。けど、思い通りに行かないのがドラフトだ。獲ろうとしていた選手を1つ前の球団に指名されることなんて、ざらにある。運を天に任せた、あの日。果たして、4巡目に「山本由伸」は残っていた。縁があったのだ。

 指名あいさつの日。山口スカウトは「ゆくゆくは日の丸を背負う素材だと思っています。そうなってもらわないと困る」と、率直な思いを伝えた。決して、大風呂敷を広げたわけではない。事実、今春初めて侍ジャパンに選出された山本は、11月にはプレミア12にも出場する。稲葉監督が「先発も中も抑えもと考えている」と期待するように、来年の東京五輪でも有力候補の1人となった。

 3年間の成長は、目を見張るものがある。1年目のシーズン終盤に1軍に昇格。2年目はリーグ2位の32ホールドを挙げた。しかし、本人は「32ホールドは2番目。次は1番になろうと思います」と納得しなかった。そして臨んだ今季、防御率1・95で見事に最優秀防御率のタイトルを獲得した。

 「由伸は自己分析ができていたし、ウイークポイントをどう改善するか、ビジョンを持てる選手です。でも、想像していた、はるか上を行く成長スピードでした。防御率のタイトルはすごいこと。特にパリーグは指名打者がいますから、4番が2人いるような打線で、防御率1点台ですからね」

 山口和男スカウトにも“うれしい誤算”はあったが、自分が見初めた選手に間違いはなかった。スカウト稼業で、これほどうれしいことはない。

 ドラフト会議が終わった夜、スカウトはみんなホッと一息付き、すぐに翌年に頭を巡らせる。胸をときめかせる出会い、縁を信じて、長い一年をまた戦う。 (オリックス担当 鶴崎唯史)

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