星稜・奥川 涙と笑顔「ここまで来られて幸せだった。甲子園にも、ありがとうという思い」

[ 2019年8月23日 05:00 ]

第101回全国高校野球選手権大会 決勝   星稜3-5履正社 ( 2019年8月22日    甲子園 )

宿舎に戻り、リラックスした笑顔をみせる星稜・奥川(撮影・平嶋 理子)
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 北陸勢の悲願は持ち越された。1995年以来2度目の決勝進出で初優勝を狙った星稜(石川)は、エース奥川恭伸投手(3年)が3回に今大会初被弾するなど9回11安打5失点で履正社(大阪)に競り負けた。悔し涙で大会を終えたドラフト1位候補右腕は、次なるステージでのさらなる成長を宣言し、甲子園を去った。

 閉会式に向かう直前、三塁ベンチ後方から聞こえた「頑張ったな」の声で、奥川の涙腺は決壊した。「込み上げてくるモノがあって…」。声の主は宇ノ気中時代の恩師である三浦隆則氏と福島栄一氏だった。笑顔を見せていたが、感情が抑え切れない。閉会式中も、涙は止まらなかった。

 1点を先制してもらった直後の3回。2死から今大会初の連続四球で一、二塁とすると、大会屈指のスラッガー井上に対して痛恨のミスを犯した。「テークバックする時、足に(右手が)ぶつかった。自分の力み。あれは悔しい1球だった」。制球しきれなかったスライダーをバックスクリーン左に運ばれ、今大会初の自責点を記録。3―3の8回には4安打を集められ2失点。選抜で17奪三振完封した相手は確実に姿を変えていた。「どうにもならない。どうやって投げたらいいだろう…」。心は折れかけた。それでも9回、126球目にこの日最速の153キロを計測。意地は最後まで貫いた。

 愛される男、愛されるチームは頂点からの景色を見ることはかなわなかった。延長14回165球を投げ抜き23奪三振を記録した智弁和歌山戦の翌18日。甲子園への移動中に偶然、宿舎前で帰途に就くためバスに乗り込む智弁和歌山ナインを見かけると、倒した相手はバスから降り手を振ってくれた。準々決勝で17―1と大勝した仙台育英戦では、相手選手から全く想像していなかった温かい拍手が送られた。奥川は閉会式後、マウンドへと向かった。「ここまで来られて幸せだった。甲子園にも、ありがとうという思いで」。多くの球児の汗と涙がしみこんだ土を大事に持ち帰った。

 今後の進路については「話し合いながら」としながらも「上の舞台で野球をして、もう1回、甲子園に立ちたい。もっともっと大きくなった姿で戻ってきたい」と力を込めた。悲願の優勝はならなかった。だが、鮮烈な記憶は永遠に色あせない。奥川の野球人生は始まったばかりだ。(桜井 克也)

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