【石川】翠星・坂本主将、左投げ捕手として最初で最後の公式戦「ここでできて良かった」

[ 2019年7月16日 05:41 ]

第101回全国高校野球選手権石川大会2回戦   輪島22―0翠星 ( 2019年7月15日    石川県立 )

<輪島・翠星>翠星の左投げ捕手・坂本(撮影・後藤 正志) 
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 登録選手11人で臨んだ翠星。試合前の守備練習時から、ある選手が異彩を放っていた。主将の坂本賢志君(3年)は、捕手としては珍しい左投げだ。

 発端は部員不足だった。2018年の公式戦は、すべて他校との合同チームで参加。今年の春季大会は8人しかいないため不出場だった。最後の夏に単独チームで出ようにも捕手がいない。遊撃手の中野魁人君(2年)が回る選択肢もあったが、守備の要になるセンターラインだけに動かしにくい。自分がやるしかない――。8人のうち、唯一の左投げの坂本君が名乗りを上げた。坂下康政監督は坂本君が1年生の時から、この“非常事態”を想定しており、すぐに左利き用のミットを特注してくれた。

 外野手から転向し、不慣れな練習に取り組む日々。坂下監督に至近距離からボールを投げてもらっての捕球練習を繰り返した。同時に選手集めにも奔走。1年生まで一緒にプレーしていた同級生を誘った。「バット引きでもいいから出てくれないか?」。坂本君や坂下監督の頼みに応える形で森田祥君、中西輝君、宮川大晟君の3年生3人が加わった。

 11人で練習できたのは約1カ月半。ようやく迎えた初戦で、シード校の壁は厚かった。1回裏の守備は8安打に5四球や失策も絡み、打者17人攻撃で13失点。20分近く守備に就いていたため、8番打者の安打後には給水タイムが取られた。坂本君は初回だけで7盗塁を許した。

 「左打者が立つと一塁ランナーが見えない。一塁手に声を出してもらうなど工夫したんですけど…」

 2回も3失点。一方的な差がついても、主将としてあきらめるわけにはいかない。

 「自分が折れてしまったら終わりだと思っていた」

 3回は2四球を与えたが安打は許さず、初めて相手のスコアボードに「0」を刻んだ。ベンチに戻る時にスタンドから届く歓声が、ひときわ大きくなった。

 懸命に投手をリードし、盗塁を刺そうと何度も二塁へ送球した。左投げ捕手として最初で最後の公式戦を、1時間47分の5回コールドで終えた。

 「試合に勝ち負けはある。負けたけど、ここでできて良かった」

 単独チームで出たいという自らの思いに応えてくれた人たちに対する感謝の思いがあふれた。

 坂下監督は「坂本の一生懸命な頑張りを見ていたからこそ、最後に3人が協力してくれたんだと思う」と振り返る。くしくも、2回にチーム初安打を放ったのは3人のうちの1人、森田君だった。

 「もう一度、一緒にやれて、一緒に終われてよかった。坂本には『1回辞めてゴメン。3年間お疲れ』って言いたいです」

 試合の目的は勝つことだが、勝敗以上に大切なものを得て「翠星イレブン」は球場を後にした。

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