【群馬】前橋商・井上 空っ風スライダー「自信がある」9球団35人のスカウト驚き

[ 2019年7月10日 05:30 ]

第101回全国高校野球選手権 群馬大会1回戦   前橋商7-1富岡 ( 2019年7月9日    高崎城南 )

富岡打線を8イニング1失点に抑えた前橋商・井上                                                                                                                                      
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 第101回全国高校野球選手権(8月6日から16日間、甲子園)の地方大会は9日、青森大会が開幕し、17大会で計109試合が行われた。群馬大会では今秋ドラフト候補で前橋商の144キロ左腕・井上温人(はると)投手(3年)が8回1失点と安定した投球を披露。初戦突破に導いた。10日は18大会122試合が行われる。

 上州名物・空っ風。前橋商・井上が5回、6番・江原に投じた124キロのスライダーが鋭く内角をえぐる。風を切るような変化に、打者はボールが膝付近に当たりながらも思わず空振りした。三振。「スライダーに一番、自信がある。内角に腕を振って投げようと思った」。必殺の空っ風スライダー。井上は満足そうにうなずいた。

 最速144キロ左腕。金の卵を見ようと、ネット裏には9球団35人のスカウトが集結した。自己最長の8回を6安打1失点で6奪三振。「今日は70点。調子はあまり良くなかったけど、勝つ投球ができた」。直球は142キロを計測し、無四球投球。スライダーは2種類の変化があり、ヤクルト・橿渕聡スカウトグループ次長は「(5回の三振は)打者の予想以上に曲がった。フォームも奇麗で潜在能力がある。直すところもない」とうなった。

 3月下旬に移転するまで前橋商のグラウンドは利根川の河川敷にあった。空っ風が吹けばボールが砂ぼこりで見えなくなったほど。そんな環境で鍛えた井上のバロメーターは「帽子飛ばし」。躍動感あふれるフォームで何度も帽子が脱げたが、115球の熱投に「8回を投げて自信がついた」と笑顔を見せた。

 前橋商は漫画家・あだち充さん(68)の母校。井上も、高校球児だった父・典之さん(45)が持っている数々の名作野球漫画を読んでおり、中でも「『タッチ』が好きです」。現在連載中の「MIX」も愛読している。上杉達也が所属した明青学園のように甲子園へ――。9年ぶりの夢舞台へ、ここから空っ風のごとく旋風を巻き起こす。 (鈴木 勝巳)

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