オリックス・飯田 あのガッツポーズに込められた思い

[ 2019年6月20日 14:20 ]

<オ・神>延長12回2死二、三塁、大山は空振り三振に倒れ、捕手・飯田はガッツポーズ(撮影・大森 寛明)
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 オリックスの次世代スターを発掘する当コラム。第18回目は飯田大祐捕手を取り上げる。

 マスク越しに、汗がしたたり落ちてくるのが分かった。「相当緊張しました。プロに入って、一番緊張したと思います」。それは6月16日の阪神戦のことだ。延長12回から出場した飯田は、山崎福とのバッテリーでピンチを迎えた。「最初の四球はヤバいと思いました」。先頭の植田に四球を与えたことから、2死二、三塁となった。打席は4番の大山。阪神からすれば最大の勝ち越しチャンスだった。

 「僕にとってはターニングポイントだったと思います。あそこで点を取られたら、もう使ってもらえないと覚悟していましたから」

 オリックスは比嘉を投入する。カウント2―2。勝負は、内角に落ちるシンカーで空振り三振となった。大山が片ひざをつき、ガックリする後ろで、飯田は右手を突き上げるガッツポーズでベンチに戻った。かなりの難所だったと思う。山崎福は延長11回から登板し、2イニング目だった。しかも延長10、11回とオリックスはチャンスをつくりながら無得点。流れが阪神に傾いていた中で、守備の要として登場した。「あの場面で出させてもらったのがうれしかった。形はどうあれ、何とかゼロで抑えたのが良かった。すごい経験をさせてもらいました」。捕手としても見せ場で、何とか結果につなげた。

 飯田は17年にHonda鈴鹿から、ドラフト7位で入団。社会人出身だけに、もちろん1年目から期待も受けた。だが、ルーキーイヤーに悔しい出来事があった。2軍戦でバッテリーを組んでいた吉田凌の好投を評価され、10月3日の日本ハム戦でも2人で組んだ。ところが、吉田凌は2回2/3を6失点KO。「違いを見せつけられた。本当に悔しかった。もっとできたと思う」と、捕手として助けられなかったことを悔やんだ。小学5年生から、ずっと捕手一筋。持ち味でもあり、自らの生きる道をインサイドワークと考えている。だからこそ、自らのデビュー戦には「後悔」が残った。

 中嶋2軍監督からも「とにかく守備」と助言を受け、モットーに「負けないこと」を掲げる。阿部(巨人)のあこがれ中央大を選んだ。打てる捕手にあこがれを抱きつつも、自らの進む道とは少し違うと分かっている。だからこそ、理想の捕手には中日で常勝時代を支えた谷繁を挙げる。「こういう捕手になりたいと思った。(当時の中日は)守備のチームで魅力的だった」と、自らの将来像と照らし合わせている。

 チームにはプロ19年目を迎える山崎勝がおり、「師匠」と呼んでいる。昨年オフには鈴鹿で合同自主トレをお願いした。師匠もインサイドワークを武器にプロを歩んできた。考え方を吸収し、成長につなげるために必死。師匠は「飯田には捕手らしい嗅覚がある」と誉めたことがあるが、1軍の経験値が足りないことが課題だ。その成長を少し助けたのが、あの阪神戦の延長12回だった。いつか、あの時の経験がいきた、という日が来ることをファンも期待してほしい。
(当コラムはスポニチホームページで不定期連載中)

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