近づく最後の夏 大船渡・佐々木に感じる“無限の可能性”とチームの思惑

[ 2019年5月28日 09:30 ]

大船渡・佐々木
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 大船渡の佐々木朗希投手(3年)の最後の夏が刻一刻と近づいている。

 チームは春の岩手県大会初戦でサヨナラ負けを喫した。佐々木を投入せずに敗れたが、国保陽平監督は試合後、佐々木の登板も考えていたと振り返った。先発の和田吟太投手(3年)が初回以降は立ち直って好投し、打線も反撃しただけに交代の判断は難しかっただろう。しかも、相手の釜石は16年センバツに21世紀枠で出場経験がある強豪。佐々木を出さずにこれほどの接戦ができたことはチームとして夏への大きな収穫だったと思う。

 関東の強豪校の現場監督や指導者からも、エースが登板せずに敗れたことについて「僕がもし大船渡の監督でも夏や将来を考えたら投げさせない」とか「見に来た人たちはがっかりしただろうが、ファンに見せるために野球をしているわけではない。試合展開や状況を考えたら、監督の判断は正しいと思う」という声が相次いだ。

 佐々木たちの一番の願いは「夏の甲子園出場」だ。大船渡から夢を叶える。そのために佐々木は地元で野球をすることを決断した。現実問題として、夏の甲子園出場への道のりでは花巻東や盛岡大付といった強豪校のハードルが待ち受ける。花巻東時代に大谷翔平(現エンゼルス)が徹底対策されていたようにこの夏は「打倒・佐々木&大船渡」で各校が本腰を入れていることは間違いない。それも踏まえてか、大船渡の投手陣は決して球種を公言しない。戦略としては当然だろう。

 そんな背景を考えると、徹底して選手を守りながら、夏の勝利を追求する大船渡高校側の苦悩や姿勢も見えてくるのだ。

 佐々木は26日の練習試合で完封。今のところ体調面は問題なさそうだ。ここ最近、最速はほとんどが140キロ台だという。だが、この数字が佐々木の無限の可能性と器用さを感じさせる。163キロを投げられる投手が球速差20~30キロのボールを操るのだ。普通、速球派は制球を両立させようとすると腕の振りが弱くなることで制球難に陥ると言われている。しかし、そこできちんと制球できるのが佐々木の本当のすごさなのだ。しかも、強豪私学などのように常駐のトレーナーやコーチはいない。体のケアなどほとんどを1人でこなしている。「令和の怪物」たるゆえんはここにもある。

 数字が一人歩きし、フィーバーの中で大船渡と佐々木は夏を迎えようとしている。それを作り出した我々メディアも責任はある。自戒も込めて、佐々木のすごさ、そして大船渡の歩みをどう伝えていけばよいか、十分に考えていかなければならないと感じた。(記者コラム・松井 いつき)

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