斎藤隆氏 MLBの育成法と似ている大船渡・佐々木の“球速制限”

[ 2019年5月17日 10:15 ]

大船渡・佐々木
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 【斎藤隆氏サミー・リポート】日本では、大船渡の佐々木朗希投手が163キロを計測したことで話題になりましたが、パドレスのマイナーにも、100マイル(約161キロ)を投げる若手投手は何人かいます。その1人が20歳のアンドレス・ムニョス投手で、19歳だった昨年8月に2Aで103マイル(約166キロ)をマーク。球団期待の若手右腕です。

 私が彼を初めて見たのは3年前。サイドハンドからやや荒れ球でしたが、その頃から球の速さは目を見張るものがありました。今季も2Aで開幕をスタートし、救援としてここまで14試合で計14回を投げて、30奪三振。いつメジャーに昇格してもおかしくない成績ですが、それでも上げないのがMLBのやり方です。

 故障のリスクを避けるために球数を制限し、まずは1シーズン戦い抜くことができる体力をつけることが先決。1年目からメジャーで投げる投手は1年に1人いるか、いないか。あのドジャースのカーショーでさえ、マイナーで中4日のローテーションを2年間経験しました。マイナーで過ごす時間は遠回りかもしれませんが、この「差」がのちに生きてくることはみんな分かっています。

 MLBは「選手の体を守る」という意識が年々、高まっていると思います。私がプレーしていた頃は、クローザーなら「3連投までOK」「4アウトまでOK」などの契約に違反しない程度なら、勝つためにどんどん使うという感じでした。しかし、最近は新しい調整法も出てきました。先日、マリナーズの菊池投手が先発して1イニングだけ投げて降板しました。中4日の間隔を崩すことなく、肩、肘の疲労を軽減させるという実に合理的な考えです。医学の世界では発病前の段階で、その人がかかりそうな病気を予測して発病を防ぐ「先制医療」というのがありますが、それに近い考え方が、MLBの主流です。

 大船渡の佐々木投手の話に戻ります。報道によると、4月に骨密度を測定し、160キロ超の球速で耐えられる骨、筋肉、じん帯ではないとの理由で、ここ3試合は球速を抑えています。大事に育てたいという国保陽平監督の考え方は理解できます。(パドレス球団アドバイザー)

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2019年5月17日のニュース