「吉川と甲子園へ!」柳ケ浦コールド発進

[ 2009年7月16日 06:00 ]

<柳ケ浦・中津北>スタンドでは吉川将聖君も柳ケ浦野球部員に抱かれ“一緒に応援”

 第91回全国高校野球選手権大会(8月8日開幕、甲子園)の地方大会は15日、29大会で236試合が行われた。11日にバスの横転事故で部員の2年・吉川将聖(しょうせい)君(16)が死亡し、42人が重軽傷を負った大分・柳ケ浦が初戦に臨み、中津北相手に11―0で5回コールド勝ちした。

 【大分・柳ケ浦11―0中津北】初戦突破の勝利監督インタビュー。藤久保監督は目を真っ赤に腫らしていた。「非常に苦しい状態で臨んだので不安もあったが、皆が一丸となって頑張ってくれた。言葉にならない…」。あふれる涙を必死にこらえた。
 バス横転による死亡事故後、一時は出場辞退も検討された。揺れるナインは毎夜、校内にある野球部の「闘球寮」でミーティングを重ねた。いつしか「吉川を甲子園に連れて行く」という共通の思いは合言葉に変わった。試合前のミーティングでも口々に交わし、初戦突破へ気持ちを高めた。試合では初回、いきなり4点を先制するなど打線が11点を奪えば、他界した吉川君とバッテリーを組んだ経験もある飯田将が、5回参考ながら無安打無得点と快投してのコールド勝ち。飯田将は「吉川の思いをボールに乗せた」と天国の“球友”に思いをはせた。
 試合前は半旗が掲げられた球場で全員が1分間の黙とうをささげた。一塁側スタンドには控え部員に抱かれて吉川君の遺影と遺灰が置かれた。河崎は「(遺影を)見てました。“見ててくれよ。一緒に戦おう”って」と吉川君と“会話”しながら試合に臨んでいた。
 現在でも4人の部員が入院中。事故車に乗り合わせた部員の中には、心の傷が深く帰省して自宅静養中の生徒もいる。「その子たちが応援に来られるまで、1日でも長く野球をやりたい」と藤久保監督。甲子園出場を決めて合言葉を現実のものとするつもりだ。

 ▼事故は…  今月11日に開会式会場の新大分球場に向かっていた柳ケ浦野球部の1、2年生部員46人を乗せたバスが大分自動車道で横転。後部座席に座っていた2年生の吉川将聖君が車外に投げ出されて死亡したほか、42人が重軽傷を負った。運転していた副部長が現行犯逮捕された。吉川君の母・歌織さん(38)の「子供たちの夢を実現させてほしい」という意向を受け、12日に出場決定。県高野連の配慮で13日の第3試合から、この日の第4試合に変更された。バスを運転し、自動車運転過失致死傷容疑で送検されていた副部長の不破大樹容疑者(26)は14日までに釈放された。

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2009年7月16日のニュース