専科・轟悠 “男役の教科書”が魅せる最後の手本

[ 2021年7月17日 05:30 ]

最後の主演舞台で熱演する専科スター轟悠
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 10月1日付で退団する専科スター轟悠の最後の主演舞台「婆娑羅(ばさら)の玄孫(やしゃご)」が21日、東京芸術劇場プレイハウスで開幕する(29日まで)。

 江戸時代、武士の身分を隠しながら長屋で暮らす男の波瀾(はらん)万丈の人生を描いた力作。「この作品を通して“後輩に形を見せていきたい”“バトンを渡していきたい”という気持ちが強くて感傷に浸っている時間がない」。そう話しながらも物語のクライマックスでは、轟演じる蔵之介が、お家の事情で新たな一歩を踏み出すことになり、現実と交錯する姿にファンも演者も涙の大団円だ。

 “男役の教科書”とも言われ、その舞台にはどんな時も品格が漂っていた。「私たちタカラジェンヌにとって“清く正しく美しく”は一生忘れてはいけないものであり、OGの皆さんも宝塚の生徒であったことを誇りに持っていらっしゃる。私もそうありたい」。大きな功績を残した轟が深い言葉を残し、静かに劇団を去っていく。 (土谷 美樹)

 ◇轟 悠(とどろき・ゆう)8月11日生まれ、熊本県出身。人吉市立第一中を経て85年初舞台。97年、雪組トップスターになり02年、春日野八千代さんのような存在に、と請われ専科入り。劇団理事を経て劇団特別顧問。身長1メートル68。愛称「イシサン」。

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