【内田雅也の追球】主軸フル出場の狙い

[ 2024年3月11日 08:00 ]

オープン戦   阪神4―5巨人 ( 2024年3月10日    甲子園 )

<神・巨>9回、遊ゴロに倒れた佐藤輝(右)(撮影・大森 寛明)
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 かつてONはどんな地方試合でも、悪天候でもオープン戦に先発出場を続けた。王貞治も長嶋茂雄も「今日の試合を楽しみに見に来てくれる人がいる」と、スターの使命と心得ていた。

 阪神でも田淵幸一、掛布雅之、それに現監督の岡田彰布も同じように使命感を持って出ていた。

 ただ、先発出場はするが、試合途中でベンチに下がるのが常だった。岡田は評論家時代、「3月中旬までのオープン戦で見るべきは5回までよ」と話していた。中盤以降は若手テストの場となるからだ。

 ならば、この日の阪神の選手起用はいつもと違っていた。森下翔太、大山悠輔、佐藤輝明のクリーンアップトリオが試合終了までフル出場したのだ。今春はそれぞれフル出場はあるが、3人そろっては初めてだった。

 甲子園球場のスタンドはオープン戦では球団史上最多、初の大入りとなる4万1129人の大観衆が詰めかけていた。さらに、この日を最後に選抜高校野球に甲子園球場を明け渡す。恒例の「春のロード」に出る。

 岡田は言う。「甲子園で次やるのは1カ月先(4月9日・広島戦)やからな。クリーンアップは最後まで残しておこうとしたんよ」。岡田流のファンサービスだった。

 だから、1点を追う9回裏、夕暮れと冷気迫るスタンドはほとんどのファンが居残っていた。大山、佐藤輝の5打席目が残っていたからだ。

 結果は大山三振、佐藤輝遊ゴロ。最後は代打ヨハン・ミエセス遊ゴロで銀傘にため息が響いた。

 岡田はファンサービスを理由にあげたが、打撃低調な主軸に復調のきっかけを与える狙いもあったろう。この日は3人で計9本の内野ゴロが転がった。わずかのタイミングのずれだろう。打球が上がらない。それでも、打者は1本の快打で感覚を取り戻す。

 森下・240、大山・214、佐藤輝・133の低打率だが、むろん成績など問わない。開幕に間に合えばいいのだ。

 3月半ば、甲子園での巨人戦は古くからある。かつてはこの巨人戦を終えると、本番想定の臨戦態勢に入ったものだ。

 オープン戦9戦全敗は気分は悪い。岡田は「まだ10試合もある。ドームからいくよ」と力強く言った。15日の名古屋から福岡、大阪と続くドーム8試合は本番なみの采配を振るう。フル出場の選手も増えるだろう。 =敬称略=
 (編集委員)

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