準々決勝で侍と激突 イタリアってどんなチーム?カテナチオ、ピアザ監督、フレッチャー兄

[ 2023年3月14日 05:05 ]

オランダに勝って喜ぶイタリアの選手たち(AP)
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 準々決勝で侍ジャパンと対戦するイタリアは、ドジャースで捕手として活躍したマイク・ピアザ監督が率いる。「東京に行けるのは本当にうれしい。サプライズを起こしたい」と意気込んだ。

 ≪堅守≫1次ラウンドでは本塁打なしと派手さはなく、ロイヤルズの内野手ロペスや、エンゼルスで大谷と同僚のDa・フレッチャーらが軸で、同国サッカー代表の伝統でもある「カテナチオ(かんぬきの意)」のような堅守も持ち味だ。エースは、メジャー通算50勝でエンゼルスで大谷と同僚になったこともある右腕ハービー。12日のオランダ戦で60球を投げたため日本戦では登板できないが、メジャーリーガーも多く侮れない。ロペスは「興奮している。大谷と対戦できるのは本当に楽しみだ」と、大一番を心待ちにしている。

 今大会では、ベンチにコーヒーメーカーを設置して注目も浴びた。指揮官は「イチローや野茂、(日本代表投手コーチでメッツ時代の同僚)吉井ら日本選手はたくさん見てきた。大谷は素晴らしい選手だが、何が起こるか分からないよ」と不敵に笑った。

 ≪采配≫野茂英雄がメジャーで奪った1918三振のうち、ピアザは最多の695を女房役として受けている。フロリダ州ベロビーチのキャンプ地ドジャータウンで初めて投球を受けたのは、大リーグのストライキが明けた95年4月7日。日本からやって来た招待選手の話に彼は熱心に耳を傾けた。「あんな実績ある選手が僕の考えを一生懸命理解しようとしてくれるんです」。感激の面持ちで話した野茂の表情は今も忘れない。

 ド軍のドラフト指名は62巡目、全体では1390番目と決して期待された選手ではなかった。しかし、93年には新人王に輝き、ド軍のスーパースターに君臨していた。「ニホンゴ、スコシワカリマス!ゲンキデスカ?ボクハゲンキデス」。私にも日本語で気さくにあいさつしてくれた。

 通算427本塁打、捕手として最多の396本塁打を放ったパワフルな打撃の一方で、肩が弱く、膝も悪かった。捕手としての能力に批判的な声も多かったが、野茂のワンバウンドになるフォークを体全体で必死に止めた。野茂は「僕には直球とフォークしかない。打者が直球を待っていても直球を投げなければいけない時がある。ピアザは僕の考え方を分かってくれた」と話す。殿堂入りの捕手は常に投手の心に寄り添い理解しようとした。

 そして今、メジャーリーガー8人を束ね、決して下馬評の高くなかったイタリアを準々決勝へと導いた。選手の心を理解するスタイルは栗山監督の価値観とも重なる。ピアザ監督の下、チームの一体感で勝負するイタリアは手ごわい相手になる。

 ≪盟友≫イタリア代表で日本でなじみが深いのは、エンゼルスで大谷と同僚の遊撃手Da・フレッチャーだ。大谷と同じ18年にメジャーデビューし、同じ94年生まれの盟友。2人がウオームアップ時に外野で行う“じゃんけんダッシュ”は日本ファンにもおなじみの光景だ。

 愛称は「フレッチ」。口数は決して多くないが、昨年から事あるごとにWBCの話題で盛り上がっていた。今キャンプもクラブハウスのロッカーが大谷の2つ隣で「翔平の球はEasy(簡単)に打てるよ。スプリット、ツーシーム、何でも大丈夫だ」と笑顔で“挑発”。混戦のA組突破に向け「一平(水原通訳)が東京でおいしい寿司店に連れて行ってくれると言っているから、次のラウンド(準々決勝)に勝ち進んで東京も行かなきゃいけないね」と話していた。

 母がイタリア生まれで「イタリア語で育てられたから、今でも70%くらいは理解できる」。ダイヤモンドバックスの40人枠に入る弟の外野手ドミニクとともに、代表入りを果たした。オフには妻や弟らと、初めてイタリアを訪れたという。

 1次ラウンドは4試合で16打数3安打(打率・188)と不振だったが、どんな悪球でも打ち返す意外性と堅実な守備は侮れない。「日本はイタリアより強いの?」と逆取材を受け「日本の方が強いと思う」と答えると「それは偏見だ!」と笑っていたが、初来日でイタリアの強さを証明するチャンスが訪れた。(柳原 直之)

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