中畑清氏 森保ジャパンの敗戦に重なるアテネ五輪の苦い記憶

[ 2022年11月29日 05:30 ]

中畑清氏
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 【キヨシスタイル!】勝負の世界は下駄を履くまで何が起こるか分からない。またまた教えられた気がするね。サッカーのW杯。強豪ドイツを最高の形で初めて倒した日本が一度も負けたことがなかったコスタリカに…。勝って当たり前というかさ。安易な期待をすると、不幸が訪れることがあるんだよね。

 2004年のアテネ五輪を思い出す。初めてオールプロで臨んだ野球競技。病に倒れた長嶋監督に代わり、ヘッド兼打撃コーチだった私が指揮を執った大会だ。予選リーグを6勝1敗で首位通過しながら、準決勝でオーストラリアに足をすくわれた。

 予選リーグで唯一負けた相手だけど、今度はエース松坂大輔が先発。スコアラーの報告は「どうやっても勝てます」。相手の分析はほとんどしなかった。ところが、先発してきたパワーピッチャーに面食らった。のちに阪神入りするクリス・オクスプリング。当時はパドレスのマイナーに在籍していた。

 全くノーマークの右腕を巧みなリードで導いたのが現在オーストラリア代表監督を務めるデーブ・ニルソン。「ディンゴ」という登録名で00年に中日でプレーした捕手だ。五輪で勝つために日本の野球を研究しに来たっていうんだよね。まんまと術中にはめられた。

 負けるわけないと思っていた相手から得点できず焦りが出始めた6回、逆に1点を先制されてしまった。7回途中からは当時阪神で活躍していた変則左腕、ジェフ・ウィリアムスにかわされて0―1の敗戦。金メダルの夢を絶たれた。

 コスタリカが18年前のオーストラリアとダブって見えるんだよね。初戦スペインに0―7の大敗。次も負けたら終わりだからね。ドイツに勝った日本を徹底的に分析し、開き直ってこの一戦に臨んだと思う。逆に日本には勝って当然、悪くても引き分けという思いがあり、それが隙につながったんじゃないかな。

 アテネの長嶋ジャパンは3位決定戦でカナダを11―2で破り、銅メダルを獲得した。森保ジャパンにはまだ頂点まで上り詰めるチャンスが残っている。決勝トーナメント進出が懸かる次のスペイン戦。気持ちを切り替えてさ。ドイツ戦の再現を期待したい。頑張れニッポン!!(本紙評論家・中畑 清)

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2022年11月29日のニュース