本紙MLB担当記者がPS初取材で感じたダルビッシュと大谷の違いと共通点

[ 2022年11月29日 07:30 ]

大谷翔平(左)とダルビッシュ有
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 アストロズの5年ぶり2度目のワールドシリーズ制覇で幕を閉じた今季のメジャーリーグ。MLB担当5年目にして、初めてポストシーズン(PS)を取材した。普段はエンゼルスの大谷を中心に取材し、シーズンが終了すれば帰国するため、筆者にとっても念願の“滞在延長”だった。

 今回のPSで担当した球団はダルビッシュが所属するパドレス。ワイルドカードシリーズ、地区シリーズの計7試合を記者席から見届けた。PSは球場の盛り上がりはもちろん、選手の気迫が言うまでもなくレギュラーシーズンと段違い。1球1球の緊張感を肌で感じた。

 その中で最も興味深かったのはダルビッシュの登板間の調整だった。ダルビッシュはほぼ毎日グラウンドに現れ、登板翌日もキャッチボールを行う。一度、終えても、数十分後には違うパートナーと再びキャッチボール。変化球の握りや腕の振りなど納得がいくまで確認している様子だった。その他にもシャドーピッチングや瞑想(めいそう)も大事なルーティンの一つだという。

 善し悪しはないが、二刀流の大谷はまるで違う。登板間のキャッチボール、ブルペンはともに一度のみ。長いシーズンで疲労を蓄積させないことが主な理由で、昨季から基本的に屋外フリー打撃も行っていない。少なくとも報道陣が見ることができるグラウンド上での練習量はメジャー屈指の少なさかもしれない。

 興味深いのは、そんな真逆の調整法をもつ2人の投球スタイルが似てきたことだ。目に見えて変わったのは大谷。昨季中盤から直球とスプリットで押し切るパワーピッチングは封印し、スライダー、カットボールやツーシーム主体で打者を圧倒。投手として初めて規定投球回に到達し、自己最多15勝を挙げた今季の投球は、まさにダルビッシュのようだった。

 ダルビッシュを集中的に取材したのは今回が初めてだったため、2人がメンタル面で似ているかどうか定かではない。それでもダルビッシュの強心臓ぶりは驚異的だった。日米メディアから大舞台での重圧を問う質問が多数飛んだが、ダルビッシュは「認識の問題」という言葉を何度も発し、質問を一蹴した。選手によっては重圧を真正面から受け止め、乗り越える手法を選ぶが、ダルビッシュは自然体や普段通りを貫き、PSで2勝を挙げる活躍を見せた。

 PS初取材が何物にも代えがたい貴重な経験だったのは言うまでもない。来年3月にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)取材も待っている。既に出場意思を表明している大谷が侍ジャパンにどんな化学反応を起こすのか。ダルビッシュは出場するのか、否か。現場で取材する記者として、中継映像には映らない裏側や選手の素顔を中心に、しっかり届けていきたい。(記者コラム・柳原 直之)

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