ヤクルト・杉村打撃コーチが明かす村上飛躍の要因 リスク冒しても変化求め続ける…向上心の賜物

[ 2022年10月4日 05:30 ]

ヤクルト・村上 日本選手最多56号&史上最年少三冠王

村上(左)のティー打撃を手伝う杉村コーチ
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 「世界の王」を超え、日本選手最多のシーズン56本塁打を放ったヤクルト・村上。規格外の打撃に隠された飛躍の要因は何か。青木や山田、横浜(現DeNA)コーチ時代にも内川(現ヤクルト)らを育て、村上を指導している名伯楽・杉村繁打撃コーチ(65)が、常に変化を求める22歳の向上心を明かした。

 55号を放ってから苦しんだけど、最後の最後に打ててよかった。令和初の3冠王にもなった。こんな22歳は、世界中どこを探してもいない。あの偉大な王さんを超える瞬間に立ち会えて幸せなことだし、コーチ冥利(みょうり)に尽きる。

 成績が表すようにとんでもないバッターになった。入団1年目から松井秀喜(元巨人)、筒香嘉智(元DeNA、現ブルージェイズ3A)に匹敵するスイングスピードと飛ばす力を持っていたが、スイングスピードはさらに速くなり、今季は右翼、逆方向の左翼に加え、中堅方向への本塁打も増えてきて理想的な広角打法になった。

 昨季は39本で岡本和(巨人)とともに本塁打王に輝いた。普通ならスタイルを変えないが「もっと打ちたい。40本、50本を打ちたい」と言い、打撃フォームからバット、練習法まで変えた。リスクを冒してまで、変わろうとする向上心が凄い。

 具体的には直球への対応力をさらに上げ、課題の高めを打つこと。そのために(1)グリップの位置を顔から肩まで下げ、(2)投手寄りに寝かせていたバットも立たせ気味にし、打つまでの時間を短くした。(3)バットも先端をくりぬき、軽くするとともにヘッドを走りやすくした。グリップも丸みを帯びたタイカッブに替え、村上には合ったようだ。ティー打撃でもトスからいわゆる「置きティー」に変え、一番高い位置に設定して高めを打つ練習をした。それも、試合と同じように全力で振るから身に付く。そうした変化に加え最短距離でバットを振るインサイドアウトの軌道を徹底したことで、さらに速球への対応力も上がり高めを打つ確率も上げて死角がなくなった。

 好奇心、強じんな精神力。試合に入れば闘争心と集中力。野球力もある。配球を読む頭の良さだけでなく、イメージ力。例えば大勢(巨人)のフォークの軌道をしっかりイメージできているから、打つことができる。

 OBのバレンティンが放ったプロ野球記録の60本塁打には届かなかったが、来年目指してほしい。(東京ヤクルトスワローズ打撃コーチ)

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2022年10月4日のニュース