鷺宮製作所・小孫 遊学館時代にヤクルト・村上封じた最速155キロ腕

[ 2022年10月4日 06:30 ]

最速155キロを誇る鷺宮製作所・小孫(提供写真)
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 【菊地選手ドラフト「隠し玉」発掘】今年のドラフトは、この選手にも注目――。「10・20」運命の日を待つのは、上位指名候補選手ばかりではない。中央球界では無名ながら、その素質と将来性でNPB入りを狙うことができる「金の卵」が全国には多く存在する。フリーライターの菊地選手(40)が全国を駆け回り“発掘”した「隠し玉」を紹介する。

 諦めの悪い男だ。遊学館3年時、創価大4年時、入社2年目の昨秋と3回のドラフト指名漏れを経験している。しかも高校時代に控え投手だった石森大誠(現中日)、大学時代に切磋琢磨(せっさたくま)した杉山晃基(現ヤクルト)、望月大希(現日本ハム)と同期生がすでに3人もプロ入りしている。人を見送る悔しい思いを味わうのはもう十分。今年こそ、小孫竜二が脚光を浴びる番だ。

 打者に向かってうなりを上げる最速155キロの快速球が最大の武器。スライダー系の球種も精度が高く、リリーフとして即戦力になれる実力がある。昨年12月に開催された都市対抗野球大会を見て、「なぜこの投手が指名漏れだったのか?」と強い衝撃を受けた。プロに進む投手よりも勢いのあるボールを投じていたからだ。補強選手として加入したNTT東日本で安田武一コーチから指導を受け、ヒントを得たことも大きかった。

 遊学館ではエースとして甲子園に出場し、九州学院の1年生スラッガー・村上宗隆(現ヤクルト)と対戦。4打数0安打と封じながら、「とてつもないセンターフライを打たれました」と大打者のオーラを感じ取っていた。創価大では感覚を崩して極度の制球難に陥り、鷺宮製作所入社後も自分へのふがいなさからブルペンで涙を流したこともあったという。先輩たちの「腕を振れ」という助言に自分の持ち味を再確認し、状態を立て直してきた。

 いよいよ旬を迎え、「都市対抗で結果を残す」と意気込んだ今季。東京予選で3戦3勝の大活躍で第1代表に導きながら、本戦はコロナ罹患(りかん)のため登板回避という悲劇。それでも、昨季から続く好調と実力はスカウト陣に見せつけられたはず。4度目のプロ入りへのチャレンジを成就させ、大舞台で大暴れしてもらいたい苦労人である。

 ◇小孫 竜二(こまご・りゅうじ)1997年(平9)9月15日生まれ、石川県出身の25歳。遊学館では3年夏の甲子園に出場し、3回戦進出。創価大では1年春にリーグ戦デビューし、2、3年時に明治神宮大会に出場。鷺宮製作所では昨年の都市対抗でNTT東日本の補強選手として3試合に登板し、計6回2/3を無失点。1メートル79、85キロ。右投げ右打ち。

 ◇菊地選手(きくちせんしゅ)1982年(昭57)生まれ。本名・菊地高弘。雑誌「野球小僧」「野球太郎」の編集部員を経て、15年4月からフリーライターに。ドラフト候補の取材をメインに活動し、ツイッター上で「大谷翔平」とツイートした最初の人物(10年10月8日)。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」としても活動しつつ、さまざまな媒体で選手視点からの記事を寄稿している。著書にあるある本の元祖「野球部あるある」(集英社)などがある。ツイッターアカウント:@kikuchiplayer

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