育てた若手有望株は気前よく放出、ぜいたく税もためらいなし 大胆なパドレスのショーを楽しみたい

[ 2022年8月5日 14:09 ]

ナショナルズからトレード移籍したフアン・ソト(左)とパドレスのAJ・プレラーGM(AP)
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 スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者が「野球界が盲目的に効率を求める風潮の中、パドレスのAJ・プレラーGMは過度とも言えるほど活動的で、大胆かつ電撃的、楽しい」と4日(日本時間5日)のコラムに記している。

 パドレスのあるサンディエゴは、TVマーケットで見ると小さい。北米にはNFL、NBA、MLB、NHLの4大プロスポーツチームを持つ都市が全部で69あり、1位のニューヨークは745万世帯、2位のロサンゼルスは573万世帯を有する。サンディエゴは113万世帯で27番目、MLBの中では26番目でスモールマーケットのチームと見なして良い。ゆえに21年2月、パドレスがフェルナンド・タティス内野手と14年・3億4千万ドル(約452・7億円)で契約すると、コラムで「持続可能なのか?」と書き、パドレス関係者やファンのお叱りを頂戴したそうだ。実際21年はサラリー総額2億1650万ドルで初めてぜいたく税を払う羽目になった。30球団で他にぜいたく税を払ったのはドジャースだけだった。

 そして今回はフアン・ソト外野手、ジョシュ・ベル一塁手、ジョシュ・ヘイダー投手らを補強し、概算でサラリー総額は2億4220万ドル、22年のぜいたく税の基準額2億3千万ドルを超え、再びぜいたく税を払うことが確実となった。にもかかわらず、ドジャースの伝説的オーナー、ウォルター・オマリーの孫でもある、ピーター・サイドラーオーナーは、プレラーGMを信じゴーサインを出している。

 他球団の関係者は、スモールマーケットチームで、こんなやり方は続かないと指摘する。例えば今回ベルも獲得したことで、エリック・ホズマー一塁手の居場所がなくなり、レッドソックスにトレード、残りのサラリー4400万ドルはパドレス負担となった。若手有望株についても、マッケンジー・ゴア投手、CJ・エイブラムス遊撃手、ロバート・ハッセル外野手、ジェームス・ウッド外野手ら、未来のスターを気前よく出した。20年7月から21年1月にかけマイク・クレビンジャー、ダルビッシュ有、ブレーク・スネル、ジョー・マスグローブら4投手を次々に獲得した時も、有望株を差し出した。プレラーGMの強味はドラフトと育成で、有望株を失ってもまた次の有望株を育てられるという自信もあるのだろう。

 ローゼンサル記者は、こんなやり方は長続きしないという関係者の声を紹介しつつも、パドレスの人たちが心配しないなら自分も心配しないし、パドレスのショーを楽しみたいと結んでいる。彼らはソト、タティスというMLBを代表する若手スーパースターを手に入れ、攻守に王者ドジャースに匹敵する戦力を揃えた。そして球団創設54年目で初めて本格的な世界一のチャンスが巡ってきたのである。

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2022年8月5日のニュース