【高校野球 名将の言葉(1)大阪桐蔭・西谷浩一監督】「何事も1番にならないと意味がないんや」

[ 2022年8月5日 09:00 ]

大阪桐蔭・西谷監督
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 第104回全国高校野球選手権大会(甲子園)は6日に開幕する。甲子園で幾多の激闘を演じ、名将と呼ばれる監督には、教育者として、指導者として、そして勝負師として、球児の心を、高校野球ファンの心を揺さぶる言葉を持っていた――。

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 「富士山が日本一の山であることは知っているやろうけど、2番目を知っているか?琵琶湖が日本一の湖であることは知っていても2番目は知らんやろ?何事も1番にならないと意味がないんや」

 今大会前時点で歴代2位の甲子園春夏通算61勝(春28夏33)、同8度(春4夏4)の優勝を誇る大阪桐蔭・西谷浩一監督。名将がチームを初めて春の頂点に導き、同校初の春夏連覇を目指したのが2012年だった。名実ともに日本一のチームを目指す上で、その代の選手たちに冒頭の言葉を投げかけた。ユニホームを脱げば、社会科教諭として教壇に立つ西谷監督。日本一になるために大阪桐蔭の門をたたいた選手たちに対し、自らの専門分野の知識も生かして目標に掲げる「日本一」の価値を分かりやすく説き、改めて発奮を促した。

 この「言葉」を教えてくれたのは当時の大阪桐蔭のエースだった阪神・藤浪晋太郎。入団3年目頃、雑談の中で高校時代の話題になり、印象に残る恩師の言葉や指導法を尋ねた際に、真っ先に挙げた。そして「自分も西谷監督の言う通りだと思います。高校野球でもプロでも1番にならないと意味がないと思っています」と続けたのを、今も鮮明に覚えている。

 藤浪は21年春季キャンプ中に一日主将として練習前の訓示を務めた時にも、恩師の言葉を引用してチームを鼓舞している。真理を突いた言葉は、高校卒業から10年近くの時間が経過しても、その脳裏に深く刻みつけられていた。12年当時も藤浪をはじめ、チーム全体に浸透したその言葉が、春夏連覇の原動力の一つになったであろうことは想像に難くない。

 「野球は9人ではなく、18人でもなく、全員でやるのが一番、強い」を信条とし、チームを「全員が大きな家族」と表現する名将。「一球同心」を部訓に掲げる西谷野球には言葉の力も備わる。12、18年に続く3度目の春夏連覇、そして1998年横浜以来、史上2校目の秋春夏3冠に挑む今夏。西谷監督が発するコメントにも、要注目だ。(惟任 貴信)

 ◇西谷 浩一(にしたに・こういち)1969年(昭44)9月12生まれ、兵庫県宝塚市出身の52歳。報徳学園では甲子園出場なし。関大では主将を務める。93年から大阪桐蔭でコーチを務め98年秋に監督就任。08年に夏の甲子園大会で優勝を果たし12、18年は春夏連覇。通算61勝(歴代2位)で計8度の優勝。

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