星野氏の提言 五輪定着へ改革案 “プロ枠”設けアマ主体で

[ 2016年8月5日 10:30 ]

星野氏

五輪野球復活 東京への提言

 野球競技が2020年東京五輪の追加種目に決まった。3大会ぶりの復帰で正式競技として初の金メダルを目指すと同時に、20年以降の競技存続も新たな課題となり、これまで五輪に出場した指揮官や選手による提言を3回にわたって連載する。第1回は前回08年の北京五輪で指揮を執った星野仙一氏(69=楽天球団副会長)。4位に終わった経験も踏まえ、スポニチ本紙に五輪への思いを語った。 (聞き手・山田 忠範)

  ――20年の東京五輪で野球競技が復活した。

 「野球界にとっては凄くいいこと。でも、良かった、良かったで終わっては駄目。ロンドン、リオの2大会で野球が外れたのはなぜか。それを考えなければいけない。完全に五輪種目に定着するためのスタートラインに立たせてもらっただけ。プロもアマチュアもない。野球界全体で考えなければいけないこと」

 ――競技定着には野球先進国の努力が必要?

 「日本や米国は野球が盛ん。ロス五輪でも公開競技で開催された。でも野球は世界的な競技ではない。例えばサッカーはワールドカップ(W杯)など世界的な大会がある。まず競技として継続する方法を各国で考えることが大事。野球には世界会議のようなものがない。日本、米国、韓国など野球の盛んな国が集まり、それぞれの立ち位置から意見を言い合うような場があればいい」

 ――08年の北京五輪では日本代表監督を務めた。

 「北京五輪でも野球は世界的なスポーツではないことを痛感した。メイン球場で練習させてもらえず、整備が行き届いていない球場で練習して足を痛めた選手もいた。やはり年俸数億でいい条件でプレーしている選手が朝5時に起きて午前中に試合したり、雨で待たされたりすればモチベーションの維持は難しい。日本や米国なら施設や環境は整っているけど、毎回その両国で五輪をするわけではなく、野球が盛んではない国での開催が多い」

 ――野球やゴルフなどプロは必ずしも五輪が最大の目標ではない。

 「日の丸を背負えば自然とモチベーションは上がる。でもあまりに環境が劣悪だと無意識に気が抜ける。だから五輪はサッカーのオーバーエージ枠のように“プロ枠”で5人ぐらいを選抜し、アマチュア主体でメンバーを構成すればいいのではないか。プロにはWBCがあるけど、アマチュアには世界的な大会がない。年々、社会人チームが減少している中、五輪が目標となれば、その歯止めにもなる。サッカー少年がW杯を夢見るように、五輪が野球少年の夢のひとつになればいい。それが年々、プロ野球に選手を輩出してくれるアマチュア球界への恩返しにもなる」

 ――4年後の東京五輪だけでなく、10年、20年後を見据えることが大事。

 「俺は人生の最終章に来ている。野球のおかげで幸せな人生を送ってこられた。だから、恩返しの意味でも自分の思いや考えを若い人につないでいきたい。今回、東京五輪で野球が戻ったことを契機にね。それには俺は人生を懸けたっていい。楽天の副会長という立場だけど、三木谷(浩史)オーナーや立花(陽三)社長に自由にさせてもらっている。楽天も大切だけど、野球界のことも考えなければいけない立場。プロもアマチュアもない。同じ野球。底辺の拡大や環境づくり…。この宿題をやり遂げ、俺の野球人生を終わらせたい」

 ≪北京五輪VTR≫予選リーグはキューバ、韓国、米国に敗れ、4勝3敗で4位。準決勝では同リーグ全勝で1位で通過した宿敵の韓国に再び敗れ、3大会連続となる準決勝敗退を喫した。3位決定戦でも米国に敗れ4位となり、00年シドニー五輪以来2度目、オールプロでは初めてのメダルなしに終わり、星野監督は「選手は必死にやってくれた。金メダルを期待していた日本の野球ファンには本当に申し訳ない。監督の私の力がなかった」と話した。

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2016年8月5日のニュース