【玉ノ井親方　視点】正代　大関復帰“消える”6敗目…　全てがちぐはぐ、敗因は「心」

大相撲初場所8日目   ●正代（寄り切り）若元春○ （ 2023年1月15日    両国国技館 ）

＜初場所8日目＞6敗目を喫した正代（撮影・長久保　豊）
Photo By スポニチ

　正代が6敗目を喫した。今場所で10番勝てば、場所後に大関に復帰できたが、その望みが消えた。

　若元春戦は墓穴を掘った。左が入って真っすぐに出ていったが、土俵際まで押し込んだところで、右から突き落としを狙ったのが失敗だった。全く効きめがなく、逆に若元春に体を入れ替えられ、懐に入られてそのまま寄り切られた。

　全てがちぐはぐだった。元々、左を差して右もねじ込んでもろ差しになるのが正代の形。だが、左が入っただけで体勢が十分ではなかったのに、右から突き落としを狙った。残念としか言いようがない。あの場面で相手のバランスを崩そうとするのであれば、逆に左からすくうべきだった。

　敗因は気持ちに余裕がないことだ。速く攻めようとしすぎて、相撲が粗っぽくなっている。だいたい負けるときは自分から仕掛けにいって、それが裏目に出ている。

　立ち合いの時に上体がそるような当たりは正代のスタイル。ただ、そのまま腰高で取り続けると、対戦相手にすればやりやすい。それ以上に問題なのは、押されるとすぐに防戦一方になってしまうところ。そこで再度、押し返すことができれば相撲内容ももっと変わるはずだ。

　前回関脇に落ちて大関に復帰したときはケガが原因だった。だが、今は体が悪いわけではない。衰えた感じもしない。

　すべては気持ち次第。左を差して右をねじ込みながら前に出る自分の相撲を思い返して、もう一度大関に戻ってきてほしい。誰もがそれを望んでいる。
（元大関・栃東）