【高野進の目】決勝のサニブラウン、坂井の好ダッシュで焦り 100メートルは戦国時代

[ 2022年6月10日 23:50 ]

<第106回陸上日本選手権第2日>男子100メートル決勝で優勝したサニブラウン(撮影・坂田 高浩)
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 世界選手権代表選考会を兼ねて行われる陸上・日本選手権は10日、大阪市・ヤンマースタジアム長居で男子100メートル決勝が行なわれ、サニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が10秒08で3年ぶり3度目の優勝を果たし、7月の世界選手権(米オレゴン州)の代表に内定した。本紙評論家の高野進氏が決勝のレースを解説した。

 サニブラウンの走りは、隣の坂井隆一郎(大阪ガス)に抜群のスピードで前に出られたためか、体が立つのが早かった。9秒97を出した時は16歩まで前傾姿勢を保っていたが、今回は8歩目あたりで体が上がっていた。焦ってしまい、追いかけ態勢に入っていたことで、走りが小さくなってしまった。

 準決勝では地面を捉えながら伸び伸びした走りをしていた。それが今季、目指しているものだろう。追い風1・1メートルだった決勝で、準決勝の走りが再現できれば9秒台が出てもおかしくなかった。

 世界のレースでは、坂井ほどのスタートダッシュを決める選手はいない。まず、他の選手たちと対等のスタートを決め、中盤からストライドを伸ばす走り方をすればいい。世界ジュニアの時から、大舞台で力を発揮できる素養があった。今季は調子が良いと聞いており、ここから1カ月で仕上げていくのではないか。世界選手権本番では日本記録の更新にも期待したい。

 3位の柳田大輝(東洋大)は跳躍種目をやっていただけあり、地面を捉えて後半伸びてくる。うまく自分のレース運びができれば、もっと記録も出せる。まだ大学1年なので上出来だと思う。桐生祥秀(日本生命)はまだ本来の走りできていないが、今年はパリ五輪に向けて力を蓄えてほしい。パリを目指して着実にやってほしい。小池祐貴(住友電工)が2番になるかと思っていたが、気合が入っていたように見えた。サニブラウンに肉薄したい思いから、気持ちが入りすぎていた。

 今の100メートルは中堅、ベテラン、若手が入り乱れている。いつもの何人、から去年から崩れ始めている。誰が次の天下を取るのか、戦国時代になっている。400メートルリレーのメンバーは、これから悩みどころ。1走の多田修平(住友電工)、3走で鉄板だった桐生も厳しい。日本陸連が選ぶことになるが、2走かアンカーにサニブラウン、スタートに切れのある坂井が1走、小池が3走、柳田がアンカーというイメージがわく。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

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2022年6月10日のニュース