埼玉がリーグワン初代王者 東京SGをノートライ18―12で撃破 無双16連勝締め

[ 2022年5月30日 05:30 ]

ラグビーリーグワン プレーオフ決勝   埼玉18―12東京SG ( 2022年5月29日    国立競技場 )

<埼玉・SG東京>リーグワン初代王者に輝き歓喜する埼玉の選手たち
Photo By 代表撮影

 決勝が東京・国立競技場で3万3604人を集めて行われ、昨季トップリーグ最後の覇者だった埼玉(旧パナソニック)が、東京SG(旧サントリー)を18―12で破り、初代王者に輝いた。チーム内で新型コロナウイルス陽性者が出た影響により、開幕節から2戦連続不戦敗ながら第3節から16連勝で“連覇”に到達。大黒柱のフッカー堀江翔太(36)を中心に日本代表候補12人を擁する選手層の厚さと勝利の方程式を確立し、今年1月に開幕した新リーグで圧倒的な強さを見せた。

 “野武士軍団(ワイルドナイツ)”が歴史の一ページ目に名を刻んだ。歓喜、興奮、安堵(あんど)。国立に後半40分を告げるホーンが鳴り響くと、埼玉の選手たちにはさまざまな感情が交錯した。堀江はポンッと両手を叩いた後、右手を強く握りしめ、「うれしい。安心した。泣いている選手を見て、頑張ったかいがあったと思った」と、喜びに浸った。

 FW陣が堅守で寄せ付けず、隙を突いて快速バックスがトライ。まさに、チームの特長を象徴する試合だった。3―3の前半28分にWTBコロインベテが勝ち越しトライを奪えば、13―12の後半33分にCTBライリーがインゴール右へ飛び込んだ。司令塔のSO山沢拓はゲームをコントロールし、試合終了間際にはジャッカルを披露。リーグ屈指の攻撃力を誇る相手をノートライに抑え、ディーンズ監督は「リーグ初の決勝にふさわしい試合だった」とうなずいた。

 もちろん、国立でも“翔太イム”を開演した。堀江は後半6分に登場すると、同29分に敵陣右10メートルライン付近のスクラムで反則を誘発。ともに勝利の方程式を確立してきたプロップのヴァルも含め、日本代表候補を終盤で投入するスタイルは決勝でも効果的だった。

 クラブハウスならぬ、ホリエハウスでの時間が実を結んだ。熊谷での新拠点が完成する前の昨夏はチーム施設が利用できなかった。そこで選手たちは群馬県内の堀江家に集結。庭が臨時の“専用施設”となり、選手が連日入れ替わりながら汗を流した。WTB竹山は「炎天下、みんなでのトレーニングは楽しかった」と絆も深めた。

 チームを引き締めたのも大黒柱だった。開幕前の練習でのこと。堀江はチームの気の緩みを感じたという。「浮ついていたので怒った。この時が唯一」。この“カツ”が、不戦敗以降の連勝街道へつながった。

 トップリーグから生まれ変わったリーグワン。コンセプトは「まだ世界にないリーグをつくろう」。その出発地となったのは埼玉だった。堀江は言う。「慢心せず、謙虚に受け止めて、また自分たちを見つめ直す」。日本ラグビーの物語はここからページを重ねていく。

 <ファンタジスタ山沢拓、守備で魅せた> 10番の大役を担った山沢拓は歓喜の涙を浮かべ「後半は苦しい時間が続いたが、最後に勝つことができて本当に良かった」と胸をなで下ろした。接戦でコンバージョン1本とPG2本に失敗。一方でエリア獲得を優位に進め、前半終了間際には、インゴール寸前でマッケンジーのノックオンを誘うトライセービングタックルも見せた。終了間際にはジャッカルで反則を誘い、「得意なプレーではないが、勝利に貢献できて良かった」と話した。

 <真夏日にプロップが…笑わないタフガイ稲垣フル出場> 現代ラグビーのプロップとしては珍しく、先発フル出場した稲垣は「こういう形で締めくくることができて最高。言われたら、80分間出るだけ」と話した。準決勝で同ポジションのミラーが負傷。この日のリザーブに本職の1番が不在だったため、今季2度目のフル出場となった。昨夏に右肘と右アキレス腱を手術。タックルスキルも改善して臨んだシーズンで存在感を示し、最後まで笑わずに「最高でした」と締めくくった。

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2022年5月30日のニュース