沙羅が笑った!涙から23日…五輪後初の実戦で復活V「今までの中で一番うれしい優勝」

[ 2022年3月4日 05:30 ]

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子個人第14戦 ( 2022年3月2日    ノルウェー・リレハンメル ヒルサイズ=HS140メートル )

W杯女子個人第14戦で優勝し笑顔を見せる高梨
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 北京五輪の混合団体でスーツ規定違反による失格処分を受けた後、初の実戦に臨んだ高梨沙羅(25=クラレ)が、130メートル、132メートルの合計291・5点をマークし優勝した。今季2勝目で、通算62勝と表彰台111回はいずれも自身の歴代最多記録を更新。失意のどん底を味わってから23日。一時は現役続行に揺れる思いを吐露した日本女子のエースが、見事な復活ジャンプを見せた。

 過去61回のW杯優勝、4度のシーズン総合優勝、平昌五輪の銅メダル…。数え切れないほどの栄光をつかんできた高梨本人が、「苦しい時間が長く続いていたし、五輪の後ということもあって、今までの中で一番うれしい優勝」と言い切った。W杯で62度目となった表彰台の頂点。3週間前は想像もできなかった、とびっきりの笑みを浮かべた。

 3度目の五輪は4位止まりでメダルを逃した。「もう私の出る幕ではないかも」。悔し涙を流しながら、気持ちを奮い立たせて2日後の混合団体に臨んだ。1回目に103メートルを飛んでガッツポーズを繰り出したが、待っていたのはまさかのスーツ規定違反。普段のW杯とは違う検査方法にほんろうされる不運もあったが、結果は変わらない。自分自身をどん底まで追い詰め、静かに北京を離れた。

 日本には帰国せずに直接欧州入り。五輪期間中に原田雅彦総監督が「チームのみんな、国民の皆さまに励まされて元気になった」と語ったが、実際は違った。悪夢が頭から離れず、「五輪の後はろくに練習もしていなかった」と部屋に引きこもった。前週のW杯再開初戦を欠場。現地入り後も「心の整理がつかない状況」で、出場を決めたのは当日朝だったが、「久しぶりに飛べて純粋に楽しい」と無欲の大ジャンプでW杯ランキング1位のクラマーや五輪金のボガタイをねじ伏せた。

 先月26日にはマラソン男子で現役復帰を決めた大迫傑の「もう一度闘いたい。勝ちたい」などと記したインスタグラムを引用して「hit me right in the feels(胸にグッとくる)」と英語でつづった。伊藤有希ら仲間や無数のファンの温かいメッセージにも背中を押された。

 「やめることで責任が取れると思っていたけれど、それは自分の勘違いだった。この優勝は自分の力ではなく、周りの人たちの力で勝ち取れたもの」。転んでも、傷ついても、人は再び立ち上がれる。どんな色のメダルよりも人々の胸に響くメッセージを、高梨が体現してみせた。

 ▼勢藤優花 (高梨とは)五輪以降は話していなかったので、久しぶりに会って元気そうで安心した。

 【沙羅の五輪以降】☆2月5日 北京五輪個人ノーマルヒルで2回目に100メートルを飛びながらも4位で2大会連続メダルならず。「もう私の出る幕ではないかも」と弱音を吐露。

 ☆7日 新種目の混合団体で1回目にスーツ規定違反で失格。チームは8位で2回目に進み、K点越えの98.5メートルをマーク。それでも終始涙が止まらず、競技終了後の取材対応はせず。
 ☆8日 自身のインスタグラムに黒一色の画像とともに「誠に申し訳ありませんでした」「私の失格のせいでみんなの人生を変えてしまったことは変わりようのない事実」「今後の私の競技に関しては考える必要があります」などと記した。

 ☆9日 中国を離れて直接欧州入り。

 ☆24日 全日本スキー連盟が高梨の今後の大会出場は未定と発表。

 ☆25日 オーストリア・ヒンツェンバッハでのW杯再開初戦を欠場。

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