急転、開幕前日にパラもロシア排除 参加容認から一転、ボイコット予告殺到で「大会存続の危機」

[ 2022年3月4日 05:30 ]

記者会見するIPCのパーソンズ会長
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 国際パラリンピック委員会(IPC)は3日、ウクライナに侵攻したロシアと支援したベラルーシの選手団に対し、きょう4日開幕の北京冬季パラリンピック参加を認めないと発表した。国名などを使わない個人資格の「中立選手」として出場を認めるとした2日の決定を1日で撤回。決定を受けて複数のチームや選手が対戦拒否やボイコットの意向を示したため、開会式(日本時間4日午後9時)前日に方針を一転させた。

 最初の決定から24時間もたたずに、ロシアとベラルーシの北京パラリンピックからの除外が決まった。国名などを使用しない「中立選手」としての参加を認めた2日以降、IPCには「かなりの数」(パーソンズ会長)のチームや選手、政府から両国との対戦拒否やボイコットの連絡が殺到。パラカーリングのラトビアは、ロシア選手との対戦拒否を表明した。選手村も「一触即発のムードになりつつあった」(同会長)ため、IPCは「大会存続の危機」「全参加者の安全を保つため」と決定を覆した。

 IPCは当初、開幕が迫る直前での除外には「法的問題」があるとしていた。だが、国際オリンピック委員会(IOC)が各国際競技団体(IF)にロシアとベラルーシの国際大会からの除外を勧告し、大多数のIFが従っている状況だけに多くの国が強く反発していた。「事態を甘く見ていたのでは」と問われたパーソンズ会長は「過小評価していたとは思わない」と否定したが、「(前日から)状況が大きく変化した。ウクライナで爆弾が爆発するたび、より多くの怒りと嫌悪が生まれた」と想定外の展開だったことを認めた。

 エントリーしていたロシア選手71人とベラルーシ選手12人は、開幕前日に出場権を奪われた。パーソンズ会長は「彼らは政府の行動による犠牲者」と強調したが、ロシアのマティツィン・スポーツ相は4日の開会式までにスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴する考えを表明。ペスコフ大統領報道官は「恥としか言えない。強く非難する」と批判した。

 2日に北京市内で開かれた会見では、ウクライナから唯一参加しているキエフ・ポスト紙の記者が、ウクライナ東部ハリコフ州で爆撃に遭い死亡した19歳のバイアスロン男子選手の写真を掲げ、「攻撃国は参加できるのに彼が競技をする機会は二度とない。この選手の親にどう説明するのか」と詰問。パーソンズ会長は「苦痛は想像できず、祈ることしかできない」とうなだれた。国際世論を読み違えたIPCを象徴するシーンだった。

 ≪排除反対中国で速報記事即削除≫開幕前日に覆った異例の事態に、欧米メディアは「驚くべき逆転劇」(AP通信)などと相次ぎ速報。APは「24時間もたたないうちに180度転換した」と伝えた。背景について、英BBC放送は「激しい批判があった」と分析。

 一方、開催国の中国は今回の決定には反対の立場とみられ、ネットメディアが速報したが、記事はすぐに削除され閲覧不能になった。中国外務省の汪文斌副報道局長は3日の記者会見で「大会組織委に聞いてほしい」と述べ、コメントを避けた。

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