「いきなり、センターどう?」で開眼した京産大・堀田礼恩 目立ちたがり屋の引き立て役が帝京大キラーへ

[ 2021年12月31日 11:30 ]

堀田礼恩
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 上からのポジション変更命令は、プライドを傷つけられることもある。WTBから転向した京産大のCTB堀田礼恩(4年)は、かなりガクッと来たようだ。今春、就任して間もない広瀬佳司監督(48)から、1対1の面談でこう告げられた。

 「いきなり言われたんです。“センター、どう?”て」

 不意打ちも不意打ちだった。WTBで活躍してきた自負があった。50メートル6秒1の快足。2年時の19年度全国大学選手権の日大戦でもトライを挙げた。

 「僕はトライを取りたい人間。テレビにも映るじゃないですが。それがパスを放る側になる」

 生粋の目立ちたがり屋には、周囲を生かす仕事が求められるアウトサイドセンター「13番」が受け入れがたかったようで、打診された相手がW杯に3度出場した元日本代表の名選手であっても、「その場でいやですと断りました」。

 そのままWTBに固執していれば、今季の23季ぶり5度目の関西制覇、全国大学選手権4強進出に貢献できたかどうかは分からない。面談後。冷静になると、答えが見えた。

 「試合に出してもらえるならぜいたくは言えない。コーチが判断をしてくれたのなら、そこで生かすのも手じゃないか」

 指揮官にしてみれば、ディフェンス力を買ってのコンバート。タックル力、守備範囲の広さは、中央でこそ生きると見ていた。

 実際、堀田が取り組むと、肌に合っていると感じた。「僕は京都成章出身。トイメンが強い留学生でも、僕は(タックルに)行くんで。ディフェンスは自信がある」。「ピラニアタックル」を看板にする出身高校のプライドにかけて、体を張ることを率先して引き受けた。タックルの回数だけでなく、ポジション柄、パスをする回数も増えた。目立ちたがり屋がいつしか、引き立て役に喜びを感じるようになった。

 「ボールタッチの回数が増えて、テレビに写る回数も増えた。そっちもいいかなって」 もちろん、チームで一、二を争う快足は、攻撃でも切り札になる。リーグ戦最終戦の関学大戦は、中央を切り裂いてトライを挙げた。

 中学はバレーボール部に所属したちょっと珍しい経歴を持つ。父が社会人でプレーしたこともあって、小学校の頃は楕円球に触れたが、たいして魅力を感じることなく、活躍の場を体育館に移した。ところが、中学時代のある日、テレビで「花園ダイジェスト」を見て体内に稲妻が走った。ラグビー熱に灯がともった瞬間だった。進路は、自宅からすぐ近くの京都成章と決めた。自分で選んだ道で「ラグビーの本当の楽しさに気付けた」とのめり込んだ。

 今、ラグビー人生の集大成となる大会のまっただ中にいる。来年1月2日、全国大学選手権準決勝(国立)で帝京大とぶつかる。準々決勝で、関西のライバル、同大を子ども扱いしたフィジカルモンスター軍団が相手だ。しかし、ひるむつもりはない。武器は、体脂肪10%強の筋肉質の体から繰り出すタックル。ぶちかましまくった先に、チーム初の決勝が待っている。(記者コラム・倉世古 洋平)

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2021年12月31日のニュース