リー・エルダー氏が死去 87歳 黒人ゴルファーのパイオニア

[ 2021年11月30日 11:28 ]

1975年、マスターズに初出場を果たしたときのリー・エルダー氏(AP)
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 1975年のマスターズに初めて黒人選手として出場したリー・エルダー氏が28日に死去。米PGAツアーが29日に公表したもので87歳だった。死因は明らかにされていないが、同氏は今年のマスターズの始球式にジャック・ニクラウス(81)、ゲイリー・プレイヤー(86)両氏とともにティーグラウンドに立った際には酸素ボンベからのチューブを鼻に挿入しており、健康状態はすぐれなかったと伝えられている。

 エルダー氏は1934年7月14日、テキサス州ダラスで10人きょうだいの末っ子として生まれたが、父は第二次世界大戦で戦死し、その3カ月後には母も死亡。伯母のもとで育てられた。その後、陸軍に従軍したときにゴルフ好きの上官と出会い、そこからまずキャディーとしてのゴルフ人生が始まった。

 その後、技術に磨きをかけて25歳でプロ選手に転向。しかし米PGAツアーは1961年まで白人にしか出場資格がなかったために、黒人のツアーとなっていたUGAでプレー。173センチと小柄な部類に入る選手ながら、出場22大会のうち18勝を挙げる“全盛期”もあった。1975年のマスターズに初の黒人選手として出場したときにはすでに40歳。歴史的な初挑戦は予選落ちに終わっていた。

 PGAツアーでは通算4勝で6回出場したマスターズの最高成績は1979年の17位。全米オープンと全米プロでは11位が最上位だった。

 しかしその成績よりも、ゴルフ界に根強くはびこっていた“人種の壁”をこじあけた人物として尊敬を集め、1997年のマスターズで初優勝したタイガー・ウッズ(当時21歳)は「私はパイオニアではない。エルダー・リーのおかげだ」というコメントを残していた。

 1960年代から70年代にかけて、リー氏は大会の開催コースのクラブハウスへの入場を断られたことがあり、プレー中にギャラリーから同氏のボールを遠くに放り投げられたこともあった。

 今年のマスターズでともに始球式を行ったニクラウス氏は「彼を招待できたことは名誉なことだった。私にとっては永遠の記憶として残ると思う」とコメント。その死はゴルフ界以外にも影響を与えており、NBAウォリアーズのガードで、ゴルフのマイナー・ツアーに出場したこともあるステフィン・カリー(33)は「彼は私にとってヒーローの1人だった。道を切り開いてくれたことに感謝したい」と、偉大な“黒人アスリート”の死を悼んでいた。

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