金メダルのウルフ・アロン「自分自身を信じるだけでした」 重圧にも、けがにも負けず、日本武道館で頂点に

[ 2021年7月29日 20:17 ]

東京五輪第7日 柔道男子100キロ級 ( 2021年7月29日    日本武道館 )

<東京五輪 柔道 男子100キロ決勝>鈴木桂治コーチ(左)と抱き合って涙のウルフ・アロン(撮影・北條 貴史)
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 柔道男子100キロ級でウルフ・アロン(25=了徳寺大職)が、見事に金メダルを獲得した。

 同階級では日本男子監督を務める井上康生が制した2000年シドニー五輪以来となる金メダル。日本勢はなかなか頂点までたどり着かず、16年リオデジャネイロ五輪も羽賀龍之介は銅メダルだった。伝統の階級で、5大会ぶりに日本勢が表彰台の真ん中に立つまでには、重圧もあったが、期待に応えた。

 さらにウルフには、もう一つの“敵”がいた。それが古傷だ。

 「膝が悪いところもあったが、リハビリもしっかりしていたし、自分自身を信じるだけでした」

 怪我を乗り越えてつかんだ舞台だった。17年の世界選手権で初出場初優勝を果たすなど、16年リオデジャネイロ五輪後から日本の看板階級を引っ張ってきた。だが、東京五輪代表選考会の一つでもあった19年12月のワールドマスターズ大会決勝で右膝を痛め、損傷した半月板の一部を除去する内視鏡手術を受けた。

 その後も右膝関節炎および関節水腫のため20年の全日本選手権を欠場。コロナ禍もあり試合から離れる期間が長かった。それでも、1年4カ月ぶりの実戦となった今年4月グランドスラムのアンタルヤ大会(トルコ)で準優勝。中4日で出場したアジア・オセアニア選手権(キルギス)で優勝と上々の内容で復帰した。最後はけがにも勝ち、東京五輪の頂点に立った。

 柔道の聖地である日本武道館で表彰台の真ん中に立つことに震えた。「子供のころから、たくさんの大会をここでやってきて、東京五輪でも優勝できて、とても感慨深いですし、支えてくれた家族、付き人、応援してくれた全ての人に感謝したいです」。どんなときも気持ちを切らさず、調整を続けたことで、最高の物語が完成した。

 ◆ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日生まれ、東京都出身の25歳。6歳で柔道を始め、千葉・東海大浦安高―東海大。15、16年の講道館杯100キロ級連覇。世界選手権は17年優勝、18年5位、19年銅メダル。19年は体重無差別の全日本選手権で初優勝した。了徳寺大職。左組み。得意技は大内刈り、内股。東京五輪男子100キロ級代表。父が米国出身。1メートル81。

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