秋の活動を断念したラグビー日本代表 協会と現場の意思決定に求められる「ONE TEAM」

[ 2020年9月17日 11:58 ]

日本代表のジョセフ・ヘッドコーチ
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 ラグビー日本代表の秋の活動が見送りとなった。新型コロナウイルスの影響で、6、7月に予定されていたウェールズ戦、イングランドとの2試合もキャンセル。昨年のW杯で史上初の8強入りを果たした日本代表にとって、次なる23年W杯への再スタートの年が、まさかの空白の1年に。ちょうどW杯開幕が迫っていた1年前、誰がこんな状況を想像できただろうか。

 14日のオンライン会見で、ギリギリまで方策を探ってきた岩渕健輔専務理事は「問題意識を強く持っている」、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチは「非常に残念」と述べた。新型コロナを考慮すれば、国内で試合を組もうが、海外に遠征しようが、一定数の否定的な世論にさらされていたであろうことは想像に難くない。それでも代表戦が1試合もないという事態は、両氏同様、純粋に残念との思いを禁じ得ない。

 会見で2人が繰り返したように、2月中旬から実戦を離れている日本の選手が11月にティア1と対戦するには、最低でも今の時期から強化合宿をする必要があった。当然ながらそれ以前に対戦カードが決まり、選手の各所属チームの承諾を得て、渡航準備を整え、出入国に関する問題をクリアにしておく必要がある。ちょうど1カ月前は、第二波の真っ只中にあった日本。その状況下で交渉相手も含め、前向きにマッチメークを進めることが難儀だったことは想像に難くない。だからこそ、ジョセフ・ヘッドコーチが「一息、ブレークを取る時間ができた」とポジティブに捉え、「選手の安全を第一に考えて下した結論は正しい」と述べたことも、理解したい。

 一つはっきりしているのは、来春は必ず代表戦を実現しなければならないということ。もちろんコロナの状況によっては、直前に中止となる可能性は否定できないが、可及的速やかにワールドラグビーや各国協会と交渉を進め、カードを確定させる必要がある。海外報道ベースでうわさされるライオンズ(全英愛代表)との対戦に紐づけ、当初この秋に対戦予定だったアイルランドやスコットランドと敵地で対戦するプランも浮上していると聞く。いずれにしても1日も早く発表することが、当面の針路を失っている日本代表、そして彼らを支えるファンに、再び希望を持たせることになる。

 一方で今後のゆくえに、やや不安を感じた点がある。会見の中でジョセフ・ヘッドコーチが明かしたように、ニュージーランド協会とも対戦へ向けた交渉が水面下で進んでいた。複数の関係者によれば、まずはマイター10カップ(州代表選手権)の複数チームと腕試しをし、マオリ・オールブラックスとの対戦を経て、最後にオールブラックスと相見えるという、より具体的なプランのオファーが届いていたことも分かっている。時期はオータム・ネーションズカップとの名称に落ち着くことになった、欧州の国際大会への参戦オファーが届く前であり、ジョセフ・ヘッドコーチを通じて日本協会に打診があったという。

 だが結果的に王国からのオファーを蹴り、日本は欧州へ向かおうとした。現場サイドはジョセフ・ヘッドコーチらコーチ陣の移動負担や渡航リスクが少ないニュージーランド行きを望んでいたという。どのような意思決定により、現場の最高責任者たるジョセフ・ヘッドコーチの希望が反映されない事態となったのか。

 より早い段階でマッチメークが固まっていれば、その他の準備に費やす時間も十分あったはずで、試合が実現していた可能性はある。一方で強化の上で最善の対戦カードを模索した結果だとしたら、それはそれで否定はしない。ただ今後に向けては、あらかじめ協会側と現場側が、もっと意思疎通を図らなければならないだろう。協会側はドル箱である代表戦をできるだけ魅力的なカードにしたいし、昨年のW杯前も代表候補がスーパーラグビーのBチームと対戦したように、ジョセフ・ヘッドコーチ側には信念と言うべき強化の腹案があるはずだ。双方のボタンの掛け違いにより、マッチメークが後手に回るようなことは、今後二度とあってはならない。

 11日には各トップリーグチームの強化トップがオンライン上で一堂に会し、来年以降の強化プランが披露された。会議では7月の日本協会理事会で藤井雄一郎ナショナルチームディレクターが提示したという、トップリーグの上位チームとスーパーラグビーのチームが対戦する案も示され、賛同を得たという。年を越せば、早くもW杯中間年。スピード感、一体感を持った代表強化の舵取りが求められている。(阿部 令)

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