追悼連載~「コービー激動の41年」その21 起死回生のウルトラ・ダンク!
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【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】今年のオールスター・ウイークエンド(シカゴ)で最初のビッグイベントとなった「ライジング・スターズ・チャレンジ(2月14日)」には日本の八村塁(22=ウィザーズ)がチーム・ワールドの一員として出場。対戦相手となったチーム・USAを含めて両軍で最多となる6発のダンクを決めた。
もともとこのイベントは1997年に新人だけの「ルーキー・チャレンジ」として誕生し、2001年から1年目と2年目の選手の対戦となり、2015年からチーム編成が米国籍の選手と米国以外の選手の2つに分けられるようになった。
第4Qの残り1分からはチーム・USAのザイオン・ウィリアムソン(19)らを筆頭に、両チームの“腕自慢”たちがジャンプしたあとにボールを両脚の間をくぐらせたあとにリングにたたき込むというダンクに挑戦していたが、成功率は半分にもいっていなかったような気がする。英語では「Between・the・legs(両脚の間)」と形容されるダンクシュートのスキルのひとつ。これは現在の若手選手が、ヘリコプターの墜落事故でこの世を去った“先輩”に捧げる追悼のダンクでもあった。
1997年2月8日。コービー・ブライアントはオールスター・ゲームの「ルーキーチャレンジ」に出場したあと、恒例の「スラムダンク・コンテスト」にも他の5選手とともにエントリーしていた。コンテストの1回戦(50点満点=審査員1人の持ち点は10点×5)は3回の試技が認められ、コービーはベースライン際から背面ダンクを決めるなどで37点をマークし、ギリギリの3位で決勝ラウンドに進出した。4位で予選落ちとなったダービン・ハム(ナゲッツ)とはわずかに1点差。しかしこのわずかな点差が新たな“伝説”を作った。
44点で1位だったクリス・カー(ティンバーウルブス)と39点で2位だったマイケル・フィンリー(マーベリクス)も決勝ラウンドへ。舞台はここからクライマックスへと向かっていく。決勝の試技は2回だが、今度は1回ずつの交代制。順番は1回戦の下位からだったので、3位通過のコービーが真っ先に試技を行うことになった。
「フィラデルフィア出身のルーキーはハリウッドじゃなくてロサンゼルスにやって来たんだ。やっとその意味がわかったぞ」。イベント終了後、実況アナの言葉がまだ私の記憶に残っている。審査委員だったドクターJ(ジュリアス・アービング)らの前で発揮した能力はファンだけでなくそれを見ていた選手や監督を驚かせた。その技術こそ、のちにファイナルを5度制覇する大黒柱の心臓部だった。
全世界が衝撃を受けたのは、まだ18歳の若者がコートの左サイドからランニング・ステップに入ったあと、ウィリアムソンらが失敗した「Between・the・legs」を何の予告もせずにNBAのレジェンドたちの前で決めたからだった。それまでの最高点は、アービング氏が開拓した腕をぐるぐる回しながらのウインドミルや、マイケル・ジョーダンがフリースローライン付近から踏み切ったロングジャンプ系に与えられていたが、その時にコービーが成功させた技術系の一発は、当時としてはどのダンクの範ちゅうにも入っていなかった。
実はこの2年前、ティンバーウルブスに在籍していたアイザイア・ライダーがベースライン際から同じテクニックを見せているが失敗。しかしコービーはボールを左手から右手にスムーズに持ち換えて両脚の間をくぐらせ、305センチの高さにあるリングの上からたたき込んだ。2本目も両脚の間を通すのだが、今度はランニングステップではなく、ボールを高く放り上げてコートに跳ね返ったあとに試みたワンハンド・ダンク。跳ね返ったボールにジャンプのタイミングを合わせて両脚の間をくぐらせるというというさらに難度の高い技で、これはリングに嫌われて失敗してしまったが(それでも37点)、ファンを歓喜させるのには十分だった。
予選は3位でギリギリの通過だったが、決勝では1本目の49点(満点は50点)で優勝。「ファンが盛り上げてくれたからこそ成功したダンク。そんなに練習はしていなかったけれど、うまくいったよ」というコメントには余裕すら漂っていた。そしてすぐに彼に対する評価と周囲の反応が変わっていった。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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