貴乃花光司氏 人生第2章は大学教授 相撲道から学んだ心と体と精神 次世代に継承

[ 2020年3月5日 05:00 ]

腕相撲対決をした貴乃花光司氏(右)と河内家菊水丸(撮影・後藤 大輝)
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 【元貴乃花親方&菊水丸 スペシャル対談(下)】大相撲春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)を前に、元貴乃花親方の貴乃花光司氏(47)と伝統河内音頭継承者の河内家菊水丸(57)による対談最終回は角界を離れて1年半になる第2の人生について。4月から神奈川歯科大の特任教授に就任すると明かし、相撲道を通じての青少年育成やその精神を普及する目的で昨年設立した一般社団法人「貴乃花道場」について語った。(構成・筒崎 嘉一)

 
 菊水丸(以下菊) 2018年10月からの独身生活は?
 貴乃花(以下貴) 独身なのか独身じゃないのか、よく分からない感覚に陥りながら、でも独身なんだなと。子供3人がある程度大きくなって独身になると半ば老後に近い状態で。羽を伸ばす感じでもなく、そういう欲求も沸いてこない。

 菊 そして貴乃花道場ですか?
 貴 使命を感じます。例えば、いじめ問題をなくすため果たせる役割はあると思う。両親を敬うとか兄弟、家族のあるべき姿とか。土俵文化も知ってもらって、裸足で大地をつかむ気持ちに至ってもらえたら。

 菊 きっちりしたシコですね。
 貴 難しいシコを分かりやすくお教えするのが私の役割。シコは下積み。下積みを長くやる人生は後で栄えることが多いと伝えていきたい。

 菊 昨年のラグビーW杯では腰を割る動作が?
 貴 (ニュージーランド代表)オールブラックスのハカですね。シコって足を上げるからいいのではなく、軸足のヒザの力をいかに使うかです。

 菊 休場力士が多いのは?
 貴 力士が大型化しているので仕方ない。でもあれだけの当たりをしながらケガしないという部分でも魅了できる。きつい体の動きの手本を見せるのが横綱土俵入り。能の動きも遅くてゆっくり、かかとを上げないからきつい。

 菊 シコは日課ですか?
 貴 今は仕事のある時間に合わせて生活している。踏む時間帯はバラバラですがシコは一生やるもの。

 菊 海外にもよく行く?
 貴 イタリア、(米国の)ニューヨーク、ロサンゼルス、インド。貴乃花道場と個人的な動きと。

 菊 インドは?
 貴 古き良き日本という感じ。ご近所付き合いがあって、一般家庭にもお邪魔した。すごく合っていた。カレーは薬膳ですね。内臓から汗をかく。(インド第2の大都市)ムンバイ。地図を見るとインド洋、東シナ海から日本へたどりつくようになっている。どうやって仏教とかが入ってきたのかなと思う。

 菊 クシュティというインド相撲も。
 貴 国技扱いでプロもある。スター選手はインドでは大スター。

 菊 強い?
 貴 やりましたよ。相撲と似ている。取組前に一礼するし、神棚もある。相撲の神事がそもそも日本にあったものではなく、いろんな血が入ってできた。日本人も先祖をたどればどこの血が入っているのか分かりにくい。だって海洋国家、そんな気がした。クシュティの選手もシコを覚えたら強くなるというのはあるかも知れない。お教えしてきた。

 菊 ニューヨークは?
 貴 大学で講義した。裸足で鍛えることの大切さ。生まれながらに人は靴を履かず、裸足で死んでいく。「裸足で鍛えておくと体が丈夫になる。そうすればいい人生を送れるくらいに思ってください」と伝えた。

 菊 協会をやめたからこそフットワーク軽く?
 貴 出入国の時にしゃべれる英語くらい覚えておこうかな、と。現役の時は偶然出世が早かったものですから、大ごとをしてきたと捉えられやすい。でも毎日は地道な作業の積み重ね。そっちをやる方が好きかもしれない。

 菊 それ以外の活動では?
 貴 この4月から神奈川歯科大の特任教授に就任することになりました。相撲道で学んできた心、体、精神の重要性を講義と実技を合わせて学生たちに指導していきたい。

 菊 人生の第1章、第2章と分かれているのもいい。
 貴 ある意味幸せかなと思う。今は1人で明日、どこへ行こうと思っても行ける身。貴乃花道場がいずれ海外へとつながるように。海外へ行けば私が横綱だったとは誰も知らない。そこが面白い。独り身で行った方が学ぶことが多い気はします。
 
 ○…アスリート出身の医大教授としては東京医科歯科大教授のアテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリスト・室伏広治氏(45)がいる。室伏氏は今年で4年連続となるオリックス・吉田正尚外野手(26)との自主トレを1月に公開。同氏考案の“ハンマートレ”を授けた。貴乃花氏も「アスリートは歯が命」を体現する授業となりそうだ。

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