大相撲春場所 中止か無観客 新型コロナ感染拡大で通常開催は断念 尾車事業部長「状況厳しい」

[ 2020年2月29日 05:30 ]

二所ノ関一門連合稽古で汗を流す貴景勝(左)と高安
Photo By 共同

 日本相撲協会の尾車事業部長(元大関・琴風)が28日、大相撲春場所(3月8日初日、エディオンアリーナ大阪)が無観客か中止になる可能性を示唆した。新型コロナウイルス感染拡大を受け、通常開催、無観客、中止の3つを選択肢とし、3月1日の臨時理事会で最終決定する予定だったが、全国に自粛ムードが広がり通常開催を断念する考えを示した。

 日本全国で公演やスポーツイベントが中止、延期、無観客での開催を決定する中、大相撲も例外ではなかった。堺市で行われた二所ノ関一門連合稽古後、報道陣の取材に応じた日本相撲協会No・2の尾車事業部長は「状況は厳しくなっている。相撲協会だけ通常開催というのはあり得ないだろう。中止か無観客でやることになってくる」と見通しを語った。

 これまでプロ野球、サッカーのJリーグと他のプロスポーツの動向を注視した同協会は25日、大阪市内で会合を開き、通常開催、無観客、中止という3つの選択肢から3月1日の臨時理事会で最終決定を下す方針を示した。だが、26日に安倍晋三首相が全国的なスポーツや文化イベントの中止や延期、規模縮小を要請。ある幹部は「総理がああ言ったのだから、みんな(協会の)頭もそうなる」と話した。同協会は公益財団法人であり、世論を考えても通常開催は困難な状況になった。

 春場所の注目力士は大関獲りの関脇・朝乃山。大関昇進のノルマまで残り12勝としており、本場所に向けて連日のように出稽古で腕を磨いている。25歳は「無観客だと寂しい。力士は声援を大事にして頑張っている」と複雑な心境を吐露したが「中止なら中止で仕方ない」と状況を見守るだけだと語る。仮に無観客開催となれば、パフォーマンスに影響を及ぼす可能性が考えられるだけに同部長も「朝乃山はかわいそう。燃えているのに」と心境をおもんぱかった。

 戦時中に一度あった無観客となれば戦後初。11年春場所が八百長問題により開催中止となった例はあるが、いずれもウイルス対策では史上初となる。「お客さんあっての相撲」と大関・貴景勝。難しい決断が迫られる中、尾車部長は「(協会)執行部で決める問題じゃない。外部理事のお話を聞いて(決める)。協会員の安全、お客さんの安全も考えて1日に決断しましょう」と頭を悩ませた。

 【大相撲 過去の中止&無観客】
 ☆中止(1946年夏/2011年春) 終戦の翌1946年夏場所は戦争で被災した国技館の修復遅れを理由に中止された。2011年2月に警視庁が野球賭博問題の捜査の際に押収した力士の携帯電話から八百長が行われていたことが判明し、同年3月の春場所が中止された。日本相撲協会は関与した力士に引退勧告。同年5月はNHKの中継もない技量審査場所として開催した。

 ☆無観客(1945年夏) 太平洋戦争末期だった1945年6月の夏場所(7日間)が非公開で開催された。当時は原則非公開ながら「慰労のため傷痍(しょうい)軍人が招待されたと聞いてます」と協会関係者。

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