鈴木セルヒオ&リカルド兄弟が五輪切符!ボリビアでレストラン経営の両親に「恩返し」

[ 2020年2月10日 05:30 ]

テコンドー 東京五輪代表最終選考会 ( 2020年2月9日    岐阜・羽島市立桑原学園 )

家族でガッツポーズ。左から母・ノルマさん、リカルド、セルヒオ、父・健二さん
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 男子58キロ級を鈴木セルヒオ(25=東京書籍)、同68キロ級を鈴木リカルド(19=大東大)が制し、ボリビア人の母を持つ兄弟がそろって五輪初出場を決めた。女子57キロ級は15年世界選手権覇者の浜田真由(26=ミキハウス)が優勝し、3大会連続の代表。同49キロ級は山田美諭(26=城北信用金庫)が制し、初の五輪代表となった。

 男子58キロ級を制した直後、セルヒオがマット脇のリカルドに近寄り、ささやいた。「待ってるぞ」。68キロ級決勝を控えていた弟は「刺激になった」と1点差の死闘に勝利。「兄弟で勝ったことがうれしい」と笑った。

 日本人の父・健二さん(53)とボリビア人の母・ノルマさん(52)を持つハーフの兄弟格闘家。川崎生まれの兄は移住先のボリビアで6歳からテコンドーを始め、早くから頭角を現した。高校で本場・韓国に留学し、大学から大東大に進学。ボリビア生まれで10歳から競技を始めた弟も、兄を追って2年前に来日。大東大に進み、力を蓄えてきた。

 「弟は才能が凄くあって、鈴木家の中でも怪獣のような扱い」と兄が話すように、高い身体能力を生かす弟に対し、自らは鋭い読みでタイミングよく技を入れてポイントを稼ぐ異なるタイプ。昨年4月の右肩手術以来となる実戦で、決勝ではリードを許す苦しい展開となったが「焦りはなかった。考えていた通りのことができた」と冷静な試合運びで終盤に逆転した。急成長で続いた弟も「毎日一緒に練習してくれたおかげで強くなった」と兄への感謝を口にした。

 ボリビアで日本食レストランを営む両親が、1カ月前から来日。食生活を支えてくれた。「脂っこいボリビア料理は控えていたけど、お祝いに作りますよ」と健二さん。リカルドは「遠くから来てくれた、父と母に恩返しできた」と喜びに浸った。
 「2人で金メダルを獲って盛り上げていきたい」とセルヒオ。孝行息子たちが、騒動続きだったテコンドー界に明るい希望をもたらした。

 《選手と理事の対立目立った19年》昨年は強化方針を巡ってトップ選手と対立した全日本テコンドー協会。9月に予定されていた代表合宿を大半の選手がボイコットし、最終的に金原昇前会長を含む全理事が退任するなど混乱が続いた。余波を受けて今月3日に就任した山下博行強化委員長は「限られた時間でどう選手の力を引き出すのか」と話し、選手の所属先指導者と連係を密にしていく方針。山田は「(騒動で)テコンドーが注目されている。五輪で結果を出して皆さんに好きになってもらえたら」と訴えた。

 ◆鈴木セルヒオ(すずき・せるひお) 1994年(平6)10月9日生まれ、神奈川県出身の25歳。男子58キロ級。韓国の高校から大東大。東京書籍所属。日本人の父とボリビア人の母を持ち、5歳時に移住したボリビアでテコンドーを始める。全日本選手権3連覇中。1メートル77。

 ◆鈴木リカルド(すずき・りかるど)2000年4月27日生まれ、ボリビア出身の19歳。男子68キロ級。母の母国ボリビアで生まれ、高校を出た後に来日。大東大へ進んだ。19年の全日本選手権は準優勝。同年のユニバーシアード代表。58キロ級のセルヒオは兄。1メートル86。

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