【二宮清純の唯我独論】情に厚かった「悲運の闘将」宮地克実さん
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25日、85歳で世を去った元ラグビー日本代表監督、元三洋電機(現埼玉パナソニックワイルドナイツ)監督の宮地克実さんは「悲運の闘将」と呼ばれた。
1988年度から94年度にかけて全国社会人大会と日本選手権で7連覇を達成した神戸製鋼に対し、宮地さん率いる三洋は、決勝での3度を含め7度戦い、全て敗れた。
両雄の激突は、当時の社会人ラグビーシーンにおけるハイライトだった。三洋の元選手で現埼玉シニアGMの飯島均が振り返る。「平尾誠二さんを中心とする神戸がエリートぞろいのスター軍団なら、こっちは雑草をかき集めた野武士軍団。何とかして倒したかった」 今も語り草なのが、91年1月8日に行われた90年度の社会人大会決勝戦。神戸は3連覇が懸かっていた。三洋が勝てば、もちろん初優勝。
スタンドにいた宮地さんが「ヨッシャ!」と大声を発したのは、後半24分、新野巧のトライで16対9とリードを広げた場面。「仮に、この後ワントライ(4点)、ワンゴールを許しても、まだウチが有利」と飯島は勝利を確信した。
宮地さんが三洋の監督に復帰したのが88年初頭。FW出身ということもあり、当初飯島は「気合だ、とか、そこは我慢や、というタイプの人なのかな」と考えていた。
だが、「まるでイメージとは違っていた」という。「いきなり“目標はオールブラックス”と書いたA4の紙を見せ、“強く、速く、多く”と強調した。87年に来日したオールブラックスのことが頭にあったのでしょう。日本は代表戦も含め5戦全敗。BKはFW並みに強く、FWはBK並みに速い。止めても止めても選手が湧き出てくる。ウチが目指すラグビーはこれや、と」
悲願達成まで、あとわずか。試合は三洋が16対12でロスタイムに入っていた。ラストワンプレー。キーパーソンは、やはり平尾だった。藪木宏之が放ったワンバウンドのパスを拾い上げた平尾は、飯島のタックルを受けたものの、タッチライン沿いに走り込んできたイアン・ウィリアムスに乾坤一擲(けんこんいってき)のラストパス。ウィリアムスは追いすがるワテソニ・ナモアを振り切り、ゴール真下に滑り込んだ。ゴールも決まり、16対18。
後日、敗因についてたずねた私に、宮地さんはこう言った。「大西一平がブラインドを突いてきて、ウチのディフェンスがそっちに振られてしもうた。あれが全てやったな」
書き残しておきたいことがある。宮地さんが気にかけていたのが、失意に暮れていたナモアだった。試合前「ウィリアムスに外に抜けられたらオシマイ。ベタ付きでマークせよ」と指示していたが、それは果たされなかった。
「アイツ、眠れんらしいけど大丈夫か…」。大会が終わってからも、宮地さんは寒風の吹く大泉のグラウンドに毎日、顔を出した。「ナモアが来てるんやないかと思うてね」。ある日、「思い詰めるように走っとる」ナモアの姿を目にした。「普通の走り方じゃない。途中から急にスピードを入れたり、逆に抜いたり。ウィリアムスを倒すことを想定しとったんやろうね」。選手たちから「親分」と慕われた人情家の一面を見る思いがした。合掌。 (スポーツライター)
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