乙黒拓、初五輪!レスリング界の若き天才が“大人”に成長

[ 2019年12月23日 05:30 ]

レスリング全日本選手権最終日 ( 2019年12月22日    東京・駒沢体育館 )

中村(左)に勝利した乙黒拓(右)(撮影・吉田 剛)
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 東京五輪代表選考を兼ねて行われ、男子フリースタイル65キロ級決勝は9月の世界選手権で五輪出場枠を獲得した乙黒拓斗(21=山梨学院大)がテクニカルフォール勝ちし、初の五輪代表を決めた。女子で唯一、出場枠を逃していた50キロ級は須崎優衣(20=早大)が世界選手権代表の入江ゆき(27=自衛隊)を下し、3月の五輪アジア予選出場権を獲得した。

 圧倒的な強さで中村を下した乙黒拓は、雄叫びを上げた。世界選手権での敗戦を経て手にした悲願の五輪切符。優勝インタビューでは目元を抑え声を震わせた。「代表入りを逃して、本当に悔しい時間だった。五輪に出ることが小さい頃からの夢だった。やっとスタートに立つことができた」

 第1ピリオド残り40秒でバックを取ってローリングで一気に加点し7―0。相手の反則でグラウンドからプレーが再開すると、第1ピリオド終了間際にひっくり返し、Tフォール。わずか2分59秒で勝負を決めた。慎重で確実な試合運びで勝ち上がった準決勝までと同様、豪快さの中にも冷静さが光った。

 18年に日本男子史上最年少で世界選手権を制した天才は、熱い闘志を前面に出して完璧を求めた。だが、それは長所であると同時に短所でもあった。今年の世界選手権は3回戦で敗れ敗者復活を勝ち上がって代表に王手をかけた3位決定戦も敗戦。先行された焦りから攻め急ぎ、失点を重ねた。

 帰国後すぐは「ピンときた反省がなかった」というが、その中で考え抜いてたどり着いた課題が精神面だった。練習では息が上がる場面こそ一度落ち着くようにし、マットの外ではオンとオフを切り替えた。「世界選手権で優勝していたら五輪本番でコケたかもしれない。敗戦のおかげでいろいろと経験できた」。幼少期から指導する父・正也さん(46)も「たくさん点を取りたい、フォールしたいと思ってやっていたところから、1点取られても良いという大人の戦い方になった」と目を細めた。

 常日頃から競い合う74キロ級の兄・圭祐も五輪代表に王手をかけた。乙黒拓は「2人で五輪に行って2人で金メダルを獲りたい」と新たな目標に照準を定める。情熱と冷静を兼ね備えた21歳が、東京へのスタートを切った。 

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2019年12月23日のニュース