八村塁が手にする驚がくの初任給は…歴史的なNBAドラフトは目前、指名は何番目?

[ 2019年6月16日 08:00 ]

NBAドラフトで1巡目指名が予想されている八村(AP)
Photo By スポニチ

 【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】日本の大卒初任給は21万2304円。でも1人だけ月額3659万1300円になる人物がいる。彼は米ワシントン州スポケーンにキャンパスがあるゴンザガ大の3年生。4年生を待たずに「社会人」になることを選択したが、現時点で考えられる初任給のひとつがこの額だ。

 給与所得者の名前は八村塁。男子バスケットボールの日本代表フォワードでもあり、米国の大学バスケ界でも十分すぎるほどの活躍を見せてきた。そして所定の手続きを終え、20日(日本時間21日)に行われるNBAのドラフトを待っている。

 スポーツ・イラストレイテッド誌の最新予想で八村の指名順位は全体11番目。NBAのドラフトは2巡目までの指名で世界で計60人しか名前をコールされないが、日本選手として史上初の1巡目指名が確実視されている。

 1巡目で指名された選手たちのサラリーは向こう3年分が決められている。契約交渉における駆け引きを回避させるためにとられた措置。そしてその額は指名順位によって違っている。つまりより上位で指名された方が給与は高い。土台となるのは「ルーキー・スケール」と呼ばれる標準額。指名順位によってすべて金額は違っており、指名した球団はこの額の80%から120%の範囲内で契約することが可能だ。もっとも金の卵たちへの配慮からか、ほぼ全員が標準額の2割増し。トップで指名されると今年度は最高で974万4840ドル(約10億6219万円)という年俸を手にすることができる。

 ではティンバーウルブスが指名権を持っている11番目の標準額を見てみよう。そこには335万7000ドルと記されており、1・2倍にすると402万8400ドル(約4億3910万円)。これを12で割った月額が冒頭の金額で、もし八村がこの順番で指名されると、初任給は日本の平均の172倍に達することになる。北米4大スポーツの中で飛びぬけてサラリーの高いNBAの今季平均年俸は約7億円なので、「11番目選手」の金額はこれに比べれば低いものの、まだ何ひとつ実績を残していないルーキーへの保証額としては超高額だとも言える。

 スポーツ専門局のESPNの予想では八村の指名は12番目(指名権はホーネッツ)。標準額を1・2倍すると382万6920ドル(約4億1713万円)と、ここでも年俸は4億円を超えてしまう。20番台の指名を予想するメディアもあるので、仮に20番目(指名権はセルティクス)とすると最大限度額は257万8800ドル(約2億8109万円)。指名が遅かったからと言ってがっかりするような契約条件ではない。

 今季のファイナルで初優勝を飾ったのはカナダ・トロントを本拠にしているラプターズだったが、実はドラフトのトップ10以内で指名された選手は皆無。MVPとなったカワイ・レナード(27)が最上位指名選手だが、それでも全体の15番目だった。もちろん指名が早い注目株の新人が活躍する可能性は大きいのだが、八村の指名が予想される10~20番台の選手がチームの主力となった例は枚挙にいとまがない。

 ロケッツ、レイカーズ、スパーズで計7回のファイナル制覇に貢献したロバート・オーリー(1992年)、リーグ屈指のシューターとして活躍したペイサーズのレジー・ミラー(1987年)、そして今季を含めて5年連続ファイナル進出を果たしたウォリアーズのクレイ・トンプソン(2010年)はいずれもドラフトでは全体11番目の指名選手。2013年に11番目で名前をコールされたマイケル・カーターウィリアムス(当時76ers)はそのシーズンの新人王にも輝いた。スポーツ・イラストレイテッド誌の予想が当たった場合、そのポジションからは明るい未来が広がっている。

 ゴンザガ大で活躍した八村は今季、米大学バスケ界で最も優秀なスモールフォワードに与えられる「ジュリアス・アービング賞」を受賞している。ダンクシュートを芸術的なレベルにまで完成度を高め、“ドクターJ”の愛称で米国の国民的英雄となった選手の名前がついた価値ある賞。マサチューセッツ大出身のアービングは1971年、当時NBAの対抗組織だったABAでプロ生活をスタートさせているが、実は1972年のNBAドラフトでは全体12番目にバックスに指名されていた。もしESPNの予想が的中すると、八村はまったく同じ順番で指名された大先輩の名がついた賞を手にしたことになるので、これはもう運命的な結びつきとしか言いようがないだろう。

 20番台の指名経験を持つ選手にもビッグネームがズラリと並ぶ。1192試合連続出場というNBA記録を保持するA・C・グリーン(元レイカーズ=1985年・23番目)、ファイナル5回の優勝歴があるデレク・フィッシャー(元レイカーズ=1996年・24番目)、今季のファイナル優勝に貢献したカイル・ラウリー(ラプターズ=2006年・24番目)、昨季の最優秀守備選手に選出されたルディー・ゴベア(ジャズ=2013年・27番目)…。そもそも米国内でプレーする高校生がNBAドラフトで指名される確率は0・03%(1万人に3人)と言われており、たとえ2巡目指名であってもエリート中のエリート。1巡目指名選手はその上を行く“雲上の人”だけに、今季のドラフトは日本にとって歴史的な新人選択会議となるだろう。

 さて八村はどの順番でどのチームに指名されるのか? 運命の日は刻一刻と迫っている。
 
 ◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは4時間16分。今年の北九州マラソンは4時間47分で完走。

続きを表示

2019年6月16日のニュース