五輪の開催国枠をどう生かすか。女子水球などマイナー種目に期待

[ 2018年5月12日 10:30 ]

水球女子日本代表の練習の様子(2016年撮影)
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 【藤山健二の独立独歩】2年後の東京五輪に向けて、このところ各競技で開催国枠の公表が相次いでいる。五輪に出場するには通常、各国際連盟が定めている予選会や世界ランクなどの諸条件をクリアする必要があるが、もし開催国の選手がそろって予選で敗退したりすれば本番での観客動員にも悪影響が出かねない。そこで、開催国への「ご褒美」も兼ねて特別に出場枠を与えることが慣例として行われてきた。今回の東京五輪でも状況は同じで、8日にはホッケー男女の出場が確定。9日にはトライアスロンが男女各2枠を獲得し、国際水泳連盟もアーティスティックスイミング(旧称シンクロナイズドスイミング)のチームとデュエット、水球、飛び込み、オープンウオーターの男女に出場枠を与えると発表した。

 早々と出場枠を確保できれば代表選手の選考もスムーズに行くし、選手も本番までのコンディションを整えやすい。チーム競技の場合は経験値を上げるために予選会があった方がいいという声もあるが、万が一のことを考えれば先に出場権を確保しておくのは悪いことではないだろう。そしてもう一つ、この開催国枠には大きなメリットがある。五輪のレベルに達していないようなマイナー種目の選手たちでも五輪を体験できることだ。

 その意味で今回一番注目しているのは女子の水球だ。「水中の格闘技」とも言われる水球は、競泳選手のスピードとアーティスティックスイミングの機敏な動作、そして何よりも水中での激しいぶつかり合いに負けないパワーが必要で、体力に勝る欧米勢が圧倒的に強い。日本の男子は前回のリオデジャネイロ五輪で32年ぶりの出場を果たしたものの、女子はこれまで一度も五輪に出たことはない。男子に比べて歴史が浅く、競技人口もはるかに少ない。実力的には五輪のレベルに達しているとは言いがたいのが実情だが、それだけにもし本番で1勝でもすればまさに歴史的快挙となるに違いない。

 女子の水球には個人的にもちょっとした思い入れがある。まだ私が駆け出し記者だった頃にお世話になった先輩記者(元五輪選手)がその後、女子水球の強化に携わるようになり、試合も何度か見に行った。それまではほとんど興味がなかったが、実際にプールサイドで見てみると実に面白い。東京五輪への出場が決まったことで今後はメディアへの露出も増えるだろうし、1人でも多くの人に興味を持ってもらえれば選手たちの励みにもなるはずだ。

 メダルを獲ることだけが五輪ではない。マイナー種目の普及、振興にも五輪は大きな役割を果たしている。東京五輪という千載一遇のチャンスをどう生かすか、マイナー種目ならではの選手、関係者の頑張りに期待したい。(編集委員)

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2018年5月12日のニュース