【こだわりの一品】呼び出し・拓郎 恩師の思い受け継いだ「拍子木」

[ 2015年11月22日 10:30 ]

恩師の拍子木を手に呼び出しを行う拓郎(先頭)

 場所前に呼び出しの最高格の立呼び出しに昇格した拓郎(59)は2人の恩人の思いを胸に横綱土俵入りの先導を務めた。

 1人は10数年前に死去した先輩呼び出しの照夫。若い頃に付け人を務め、仕事のいろはを教えてくれた。約15年前に照夫の夫人から形見の拍子木を譲り受け、現在も使用。「立呼び出しとなり、しっかり行動しなくては顔向けができない」と常に照夫の顔が浮かぶ。

 もう1人は急逝した理事長。40年前に三保ケ関部屋に入門し、北の湖が引退して独立するまでの10年を同じ釜の飯で過ごした。2年前の理事長の還暦土俵入りでは副立呼び出し(当時)でありながら先導を務めた。「先輩の立呼び出しがいるにもかかわらず理事長から“拓郎にやらせる”と言われた。一生忘れられない」。もちろん手には照夫の拍子木を持った。

 先月、立呼び出しに昇格したのも理事長がいたからこそ。「普通、呼び出しの昇格は1月。それが10月に上げてもらい、場所も見届けてくれた。亡くなられて言葉が出ない…」。2人の恩師の思いとともに定年までの残り5年余りを全うする。

続きを表示

2015年11月22日のニュース