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黄金呼ぶ入魂ルアー 知的障がい者ら対象・生活介護施設の「メンバー」作

[ 2023年1月23日 07:06 ]

ルアー作りを提案した宮川さんと筆者。手にしているのはメンバーが描いたマウリアートの魚
Photo By スポニチ

 【釣り女子アナの伝えたいこと】釣りが大好きなアナウンサー・大塚ひとみが「魂のこもったルアー作り」をしているメンバーに密着。その思いとは?取材の模様は動画でもお楽しみいただけます。

 ルアーの下地が、黄色、緑、ピンク…手塗りで染まっていき、そしてガシャンとルアーの形に丸くくりぬかれていく。作っているのは、知的障がい者らを対象とした生活介護施設「特定非営利活動法人あうん プラスアルファ」(町田市)。ここでは利用者を親しみを込め「メンバー」と呼んでいる。

 ルアー作りを提案したのは、釣り好きのスタッフ・宮川雄太さん(28)。「メンバーたちの社会参加が目的で、かつ本人も楽しめる作業をと、自分が趣味で行っていたルアー作りを導入しました」

 作るのは昨年から販売が始まった「豆スプーン」。比較的簡単で危険な作業も少ないのが理由だ。メンバーが行うのは、ルアーのベースとなる厚紙への色塗り。一枚一枚手塗りで色を乗せていく。それを丸形にくり抜くと、ルアーの形が見えてくる。

 筆者が塗った厚紙を「くりぬき担当」のメンバーに渡すと、「はい!」と自信あふれた元気な声で引き受けてくれた。「好きな作業、得意な作業を見つけてくれていたらうれしいですね」と宮川さんは話した。

 このルアーで釣ってみたいと、神奈川県南足柄市の管理釣り場「足柄キャスティングエリア」を訪れた。

 ここは一番最初にルアーを販売してくれた場所だ。取締役の高原愛里さん(47)は販売に力を入れ、ルアーと一緒に釣果写真や手作りポップを陳列。そこにはある特別な思いがあった。

 「息子も知的障がいがある。特別支援学校に通っていて純粋で一生懸命な方をたくさん見てきたので力になりたいと思いました」

 このルアーを愛用している常連親子、諸岡孝幸さん(44)、息子の潤くん(15)と挑戦した。筆者の1投目…グググ!ヒット!早速、ニジマスが釣れた。次は「黄金金時ヤマメ」というオリジナルのアルビノヤマメも。

 オレンジのルアーでニジマスを釣り上げた孝幸さんは「手塗りで色に変化があると魚の反応が良い。気持ちが入っているルアーなので釣れた時には良かったと思う」。潤くんは「釣れたよっていう思いを伝えることによって、(メンバーの皆さんが)より頑張る気持ちになってくれたらうれしいです」と笑顔で話した。

 ◇大塚 ひとみ(おおつか・ひとみ)1993年(平5)生まれ、千葉県出身。フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局、栃木放送、ウェザーニューズを経てフリーに。釣り歴はカサゴなど小物釣りを中心に20年。

 ◯…ルアーの第2弾「マウリビーンズ」が発売される。それは無地だったパッケージに魂を込めること。そのために「マウリアート」(マウリはハワイ語で魂の意味)を採用した。長年、施設の創作活動で描き続けている絵だ。載せる魚の絵はカラフル。ウロコ一枚一枚違う色で彩られている。宮川さんは「描いたメンバーさんの目には世界がバラ色に見えているのかもしれない。これを見た人が私みたいに何かを感じ取ってくれたらうれしいです」と話す。「魂のルアー、魂のアートを一つにしたものを広げて、メンバーが頑張っているところがもっともっと社会の表に出ていけばいいなと思います」

 ◯…「マウリビーンズ」は世田谷区にある釣具屋「t―Route」で受け入れが決定。2月に発売予定だ。店長の土屋綾介さん(36)は「店に置くだけではなく、ネット販売もして世界中の釣り人に知ってほしい」と話した。

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