【コラム】金子達仁

バルサ安部の移籍金に思う“日本の貧しさ”

[ 2019年7月18日 19:00 ]

鹿島からバルセロナへ移籍した安部裕葵
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 移籍金110万ユーロ(約1億3310万円)で安部裕葵のバルセロナ移籍が決まった。チームの公式サイトによれば、契約期間は4年で、バルサB(実質3部リーグに所属)に在籍中は4000万ユーロ(約50億円)、トップチームに昇格した場合は1億ユーロ(約121億円)の契約解除金が発生することも発表された。

 契約途中に移籍をする場合に発生するこの契約解除金、世界的には無名の日本人選手に設定された額としては極めて破格。チームがいかに安部の才能と将来性を買っているかがうかがえる。

 とはいえ、もし使い物にならなければゼロになることもある移籍解除金は、言ってみれば机上のお金。今回の移籍でわたしが一番驚き、考えさせられたのは、実際に発生した110万ユーロの移籍金だった。

 バルセロナの財力は凄い。そんなことは他人から言われるまでもなくわかっていたつもりだが、しかし、今回安部がひとまず所属するのはバルサBである。

 3部リーグで戦っているチームなのである。

 3部リーグでプレーする選手のために、J1のチームですらなかなか出せない移籍金をポンと出すだけの財力が、バルサやレアルにはある。

 なぜだろう。

 世界的な人気があるから?いや、カタルーニャの一クラブでしかなかった頃から、バルサは世界中の名選手を買いあさっていた。放送権料が莫大(ばくだい)だから?かもしれない。けれども、レアルがペレに白紙の契約小切手を差し出したのは、サッカーは基本的にスタジアムにいかなければ見られない時代だった。日本市場を意識したマーケティング?だとしたらなぜ中国人選手を獲得したというニュースが聞こえてこない?

 スペインがGDPでも人口でも日本を上回っている、というのであればまだ納得もできる。中国のチームがすさまじい札束攻勢をかけられるのは、まさにそれゆえだからだ。だが、スペインという国だけでなく、バルセロナやマドリードという都市単位で見ても、経済規模や人口では日本や東京、大阪を大きく下回る。

 なのに、なぜ?

 3年前に政府がまとめた「日本再興戦略2016――第四次産業革命に向けて」の中では、スポーツの成長産業化が現在約550兆円のGDPを600兆円に引き上げる上で重要な役割を果たす、とされている。新たに講ずるべき施策としてスタジアム、アリーナの改革が謳(うた)われているのも画期的だ。

 詳細を知りたい方には平凡社新書から出た「スポーツビジネス15兆円時代の到来」(森貴信著)をお薦めするが、とにかく、目下5・5兆円程度とされるスポーツ市場の規模を、25年までに約3倍にしようという国家プロジェクトが、進行中なのである。

 思えば、なぜ日本のサッカーは勝てないのかという命題と向き合ってきたのが、この四半世紀だった。これからは、そこに「なぜ日本のサッカー(スポーツ)は貧しいのか」というテーマも加わる。ここは一つ、国を信じてみようかな。(金子達仁氏=スポーツライター)

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