【コラム】金子達仁

言い切ってしまおう。これは、21世紀最高のW杯である

セネガル戦、乾のゴールが決まり喜ぶ日本代表メンバー
Photo By ゲッティ イメージズ

 サッカーは難しい。

 初戦、放ったシュートはわずか5本で、枠内に飛んだものは1本もなかった。結果は0―1。となれば、当然声があがる。

 「もっと打て!」「メンバーを入れ替えろ!」

 チームは世論に従った。スウェーデン戦で1本もシュートを打てなかった巨漢CFを外し、選手たちはおよそ決まりそうもない状況からでも強引に狙いまくった。敗れはしたものの、シュート数では相手を上回り、1点を奪うこともできた。

 これでよかったのか。

 わたしの目には、この日の韓国は点を取ることより、シュートを打つこと自体を重視しているように映った。小柄な選手の多いメキシコからすると、1メートル97のキム・シヌクは相当に怖い存在だったはずだ。初戦を落としたことで、韓国はやることなすことがことごとく裏目に出てしまった感がある。

 一方、ドイツを相手に劇的な勝利を収めたメキシコも、その後遺症に苦しんでいた。いまやすっかり世界の強国となった彼らにしても、こういう状況、心理状態でW杯の第2戦を戦った経験はない。あまりにも大きすぎる初戦の勝ちが、圧倒していてもおかしくない相手との試合を難しくしてしまっていた。

 そしてドイツ対スウェーデン。

 ちょっと劇的な試合があるとすぐに「奇跡」という言葉を使うのは日本のマスコミの悪いクセだが、この日の逆転勝ちは、掛け値なしに奇跡的な出来事だった。ドイツ人にとっても、82年大会準決勝のフランス戦を超える「世紀の逆転」といえるかもしれない。

 初戦を落として迎えた試合で相手に先制点を許す。まさしく絶体絶命。常に1次リーグは突破してきたドイツ人は、気が遠くなるほどの恐怖を覚えたはずである。しかも、後半途中には守備の要が退場処分。

 「ゲルマン魂」という言葉は日本人による造語らしいが、しかし、そこからの彼らが見せた戦いぶりは、スピリチュアルなものを感じずにはいられないものだった。そして、先制を許す原因を作ってしまった男が、起死回生の逆転弾。伝説的な試合がまた一つ、生まれた。

 ここまで凄い試合が連続して生まれてしまうと、もう言い切ってしまっていいかもしれない。数日前、この大会は歴史的なターニングポイントになる、と書いたが、もう一つ――。

 これは、21世紀最高のW杯である。

 まだ試合はたっぷりと残っている。けれども、もし今日をもって大会が中止になってしまったとしても、いくつかの試合は「W杯における最良のゲームの一つ」として記憶されていくことだろう。日本対コロンビアも、66年の北朝鮮対イタリアや、94年のサウジアラビア対ベルギーと並ぶ、アジアによる輝かしい番狂わせの一つとして歴史に残る。

 21世紀最高のW杯は、日本人にとって史上最高のW杯となる可能性もある。しかも、日本にはまだ新たなページを書き加えるチャンスが残されている。

 それも、他力ではなく自力で、である。(金子達仁氏=スポーツライター)

[ 2018年6月25日 13:35 ]

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