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アフリカ勢初4強!モロッコ旋風止まらん ポルトガルも破った堅守速攻!ネシリが頭で千金弾

[ 2022年12月12日 05:05 ]

FIFAワールドカップカタール大会 準々決勝   モロッコ1-0ポルトガル ( 2022年12月10日    アルスママ競技場 )

準決勝に駒を進め歓喜に沸くモロッコイレブン(撮影・小海途 良幹)
Photo By スポニチ

 快進撃で初の8強進出を果たしていたFIFAランク22位のモロッコが、アフリカ勢初の4強入りを決めた。10日、準々決勝で同9位のポルトガルに1―0で勝利。前半42分にFWユセフ・ネシリ(25=セビリア)が豪快に頭で先制点を決め、今大会わずか1失点という堅守で逃げ切った。また前回優勝のフランスはイングランドを2―1で破り、2大会連続の準決勝進出。これで4強が出そろい、13日(日本時間14日)にアルゼンチン―クロアチア、14日(同15日)にフランス―モロッコが行われる。

 夜は空気が冷え、高く上がった丸い月がよく見える。だが、会場全体が放っていた熱気は昼間のようだ。耳をつんざく声援の中、レグラギ監督が宙を舞う。1回、2回、3回、4回。その後、両手を突き上げて後押しを続けるサポーターの元に駆け寄った。アフリカ勢として初の4強進出に「アフリカ、そしてアラブの人々がエネルギーをくれた。新たな歴史を刻むことができた」と喜びに浸った。

 豪快な一発が勝利を引き寄せた。前半42分、華麗なパスワークで相手陣に攻め込むと、左サイドからふんわりとしたクロスが供給された。1メートル88のネシリが大地を力強く蹴って、重力など感じさせないように舞い上がった。相手GKが伸ばした両手よりも高い打点のヘディング。ボールは強く叩きつけられ、ゴールネット上部に突き刺さった。

 「欧州の国々はW杯でこれまで何度も優勝してきた。私たちは死力を尽くし、それを打ち砕かないといけない。私たちは夢を見ることができる。夢を見なければ、何かを成し遂げることはできない」。大声援で選手たちに勇気を与え、相手ボールの際には大きなブーイングが鳴り響いた。まるでホームのような雰囲気をつくってくれたサポーターに、指揮官は感謝した。

 開幕3カ月前に監督交代劇が起こった。主力選手との確執でハリルホジッチ前監督を事実上の更迭。後任に就いたレグラギ監督の下で規律やプレー強度、豊富な運動量はそのままに、より強固な絆が生まれた。この日はボール保持率23%ながらシュート数はポルトガルより2本少ないだけの9本で、枠内3本は同数。1次リーグで前回3位のベルギー、決勝トーナメントに入ってスペインと優勝候補を撃破したのは“奇跡”ではないと改めてピッチで証明した。

 強じんなフィジカルと足元の技術を持ち合わせ、チームのためにプレーできる26人の次の標的は前回王者フランス。「次世代にとって重要なのは、アフリカ勢がW杯で準決勝あるいは決勝に行ける可能性を示したことだ」。さらなる歴史の扉を押し開くために、勇敢さを体現するチームの快進撃は止まらない。

 ≪5試合で失点「1」O・Gだけ≫モロッコは準々決勝までの5試合で1失点で、1次リーグ・カナダ戦のオウンゴールのみ。32カ国が出場となった98年大会以降、わずか1失点で準決勝進出は06年ポルトガル以来、5チーム目の最少失点4強進出国となった。そのうち相手に得点を奪われず、失点がオウンゴールなのは06年イタリアに次いで2チーム目。

 ≪欧州“逆輸入選手”が原動力に≫現在のモロッコ代表には複数の国籍を保有し、海外で生まれ育った選手が多い。ジエシュはオランダで生まれ、ヘーレンフェインの下部組織などで技を磨き、19歳でトップチームデビューを飾った逸材だ。アムラバトもオランダ出身で、ユトレヒトのユースからトップチームに昇格した。2人はオランダ国籍を持ち、年代別のオランダ代表でプレーした経験がある。スペインとの二重国籍を持つハキミはスペインで生まれ、Rマドリードの下部組織で育った。欧州でステップアップを重ねた彼らは“逆輸入選手”としてモロッコのA代表に選出され、主力として史上初の4強入りの原動力となった。

 【モロッコ王国アラカルト】★政治体制 立憲君主制。99年にムハンマド6世国王が即位。昨年9月の下院選で王党派の「独立国民連合」(RNI)が躍進し、党首のアジズ・アハヌッシュ新首相による新内閣が発足。

 ★面積&人口 約44万6000平方キロで日本の約1.2倍。人口は約3666万人(22年6月)。首都はラバト。最大の都市はカサブランカ。

 ★言語&宗教 公用語はアラビア語とベルベル語。56年まで実質的な植民地だった影響でフランス語を話す人も多い。イスラム教が国教に定められており、スンニ派が大半を占める。

 ★主な産業 農業(麦、ジャガイモ、トマト、オリーブ、かんきつ類、メロン)、水産業(タコ、イカ、イワシ)、観光業などが盛ん。

 ★スポーツ サッカーのほかにテニス、格闘技などが人気。陸上では84年ロサンゼルス五輪男子5000メートル金メダリストのサイド・アウィータ、04年アテネ五輪で男子1500メートル、5000メートルの2冠を達成したヒシャム・エルゲルージらが有名。

 ★食文化 世界最小のパスタといわれるクスクスが主食。円すい形の土鍋(タジン鍋)で肉や野菜を煮込むタジンも伝統料理。

 ▽W杯のアフリカ勢 34年大会のエジプトを最後に長く出場がなく、アフリカ単独の予選が始まった70年大会でモロッコが出場。初の決勝トーナメント進出を果たしたのもモロッコで、86年大会でポルトガルに勝つなど1勝2分けで1次リーグを突破した。翌90年大会では英雄ロジェ・ミラを擁し「不屈のライオン」と呼ばれたカメルーンが初の8強入りを果たした。以降は1カ国以上が決勝Tに進み、02年大会のセネガルと10年大会のガーナが同じく8強に進出も、あと一歩が届かず。前回18年大会では、9大会ぶりに全チームが1次リーグ敗退を喫していた。

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2022年12月12日のニュース