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強豪国との対戦…“闘将”「レベルは変わらない」

[ 2010年5月19日 06:00 ]

南米ブラジルで生まれ育った闘莉王は、日本代表として南アフリカW杯に臨む

 南米ブラジルで生まれ育ち、日本生まれの選手以上に熱い侍魂を持つ男がW杯に挑む。W杯メンバーに選出された名古屋のDF田中マルクス闘莉王(29)が本紙のインタビューに応じた。J2水戸時代の03年に日本国籍を取得してから7年。ブラジル出身の日本代表選手としてW杯に出場するのは呂比須ワグナー、三都主アレサンドロに次いで3人目の快挙。祖父の生まれた国を背負って戦う初の大舞台を前に、闘将はどんな思いを抱いているのか。

 1次リーグで対戦するカメルーン、オランダ、デンマークはいずれも日本より格上。個々の勝負ではかなわない。だが決して勝てない相手ではないとも感じている。
 「皆、オレが(カメルーン代表FW)エトオを止めればとか(オランダ代表MF)スナイダーを封じればと言うけど、1対1の問題じゃない。サッカーは11対11。そしてサッカーは1+1が2にならないこともある。2・5になるかもしれないし、逆に1・5にしかならないかもしれない。そういう意味では勝てるチャンスはある」
 ――どうすれば1+1が2・5になる?
 「その場を楽しまなきゃ。腰が引けてちゃダメだし、圧倒されても堂々と自分たちのプレーをしていかなくちゃいけない」
 ――もっと詳しく
 「(09年9月に)オランダともやったり、他の強豪国とも試合をしてきたけど、勝負を分けるのはさ細なところ。細かいところでの切り替えであったり、球際であったり、勝負強さであったり、強いメンタリティーであったり。そこを見逃すか見逃さないか。どれだけ心の準備ができているか。世界(大会の試合)を見ると大勝というのは少ない。1―0とか2―1とか。レベルは変わらない」
 ――最後は気持ち?
 「そう。ボクはいつも気合だと言っているんですけど、やっぱりそこが原点ですよ。相手よりも先にボールに触る。相手よりもちょっとでも高く跳ぶ。実際は跳べていないかもしれないけど、どこか頭に当てればゴールが入るかもしれない。そういうところが日本人には足りないところなのかもしれない」
 ――準備段階で大切なことは?
 「自信を持つこと。だからと言って弱い相手から何点取っても意味がない。逆に強い相手にやられても“ここに答えがある”“これが正しい方法なんだ”と思えるようにしたい。自信持っていけるかブレて(大会に)入るかでは全然違う」
 ――韓国戦、イングランド戦、コートジボワール戦が重要になる?
 「自分たちがここから進んでいく道を明確にしてくれる相手だと思う」
 夢にさえ見ることのなかったW杯。ブラジル人マルクス・トゥーリオ・ユウジ・ムルザニ・タナカは、運命に導かれるように海を渡り、日本で夢を現実にした。南アフリカで、田中マルクス闘莉王はサッカー人生のクライマックスを迎える。

 ◆田中マルクス闘莉王(たなか・まるくす・とぅーりお)1981年4月24日、ブラジル・サンパウロ州生まれの29歳。日系3世で97年に16歳で来日し、03年に日本国籍取得。千葉・渋谷幕張高から01年に広島入り。03年J2水戸、04年浦和、10年名古屋に移籍。06年JリーグMVP、04~09年ベストイレブン。04年アテネ五輪代表。日本代表37試合7得点。1メートル85、82キロ。血液型B。

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2010年5月19日のニュース