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現役世界王者の前に涙…原沢は絶対王者にあと一歩 山部は組み勝つも技が出ず

[ 2016年8月13日 08:27 ]

<柔道・男子100キロ超級決勝>リネール(左)に食らいつく原沢だったが、惜しくも銀メダル

 【金野潤の目】柔道最終日の日本勢はともに現役世界チャンピオンに挑み、敗れたが、十分勝てるだけの試合内容だった。それだけに「良く頑張った」という気持ちと「悔しい」という気持ちの両方があるのが正直なところだ。

 絶対王者リネールと決勝という舞台で対戦した原沢のプランは明確だった。豊富な稽古量に裏打ちされたスタミナでは原沢に分がある。序盤から王者の攻撃をしのぎ、終盤以降に攻勢に出る。延長戦までもつれ込めば勝機はあると見ていた。しかし、最初に指導が与えられたタイミングが早く、中盤までに指導2の差になってしまった。リネールは原沢と組み合うことを避けており、掛け逃げにも見える技で試合の流れを切ってきた。ここであと1歩、審判に攻勢をアピールできれば、プラン通りの試合になったのではないか。

 高校入学時に66キロ級だったように、原沢はじっくりと成長してきた選手でまだ完成途上。骨のフレームが長く、将来的には現在より5キロほど筋肉をつけていける。そうなれば、もっと圧力をかけられるようになるだろう。敗戦で悔しい思いをしているだろうが、現時点で絶対王者をあと一歩まで追い詰められたことを自信に変え、20年東京では頂点に立ってほしい。

 男子は7階級すべてでメダルを獲得した。これは現在の首脳陣の指導力のたまものだろう。所属先との連携を深め、各個人に適切な指導を行ってきた井上康生監督らコーチ陣に拍手を贈りたい。

 一方、女子の山部は準決勝まで積極的な試合運びが見られたが、オルティスとの一戦だけ慎重になり過ぎた。指導を受けてしまったあと、守勢に回った相手に、組み勝ちながら技が出なかった。もっと技出しを早くしていれば、勝機はあったように思う。

 また、得意の払い腰がやや単発気味になってしまったことも悔やまれる。支え釣り込み足や大外刈りで相手の体勢を崩したり、大内刈りのような後ろに倒す技を意識させたりしたうえで、払い腰に入っていく工夫も必要だった。これも十分勝てる試合内容だっただけに、惜しかった。(94、97年全日本選手権者、日大男子監督、文理学部准教授)

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2016年8月13日のニュース