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五輪版“下町ロケット”だ!金藤 社員61人の会社が生んだ世界一

[ 2016年8月13日 05:30 ]

金藤理絵が女金メダルを獲得し、喜ぶ三瓶芳社長(中央)らフットマークの社員とスイミングクラブの子供たち

 リオデジャネイロ五輪競泳女子200メートル平泳ぎで金メダリストとなった金藤理絵(27)が勤務する東京都墨田区のフットマーク社では12日、パブリックビューイング(PV)が行われ、歓喜と涙に包まれた。下町にある従業員61人の会社が世界一への道をサポート。家族のように接し、共に追いかけた夢が結実した。

 スカイツリーを望む下町の一角にあるフットマーク社では、夏期休暇中にもかかわらず、会議室に特設されたPV会場に社員や関係者約70人が集まった。レース中は画面を見られずに下を向いて手を合わせる社員が目立ち、金メダルが確定した瞬間には大歓声が響き、涙を流して抱き合った。

 三瓶芳社長(58)は「ここまで感動をしたのは初めて。特別なご褒美を考えなければ」と興奮した表情で語り、社員の塩田耕平さん(26)は「こんな小さな会社に入って、世界一を獲る人と密接につながれるとは」と喜びを爆発させた。

 水泳用品の製造・販売を中心に行う同社。社員61人と少数ながら、日本で初めて水泳帽を売り出した実績を持ち、スクール水着で高いシェアを誇る。磯部成文会長(75)が「会社は家で、社員は家族」と語るアットホームさが特徴だ。

 金藤が入社したのは2011年。かつて加藤健志コーチ(50)に指導を受けた社員がいたことが縁だった。社内の納涼会などにも積極的に参加する金藤のことを社員は「理絵ちゃん」と呼び、交流を深めてきた。

 2度目の出場を目指し、臨んだ12年のロンドン五輪選考会でまさかの敗退。結果が出なかった時には「やめたい」ともらす金藤。それでも社員らは本人の気持ちを第一に考え、家族のように静かに見守った。

 社内には応援団の「りえっ娘(こ)倶楽部」をつくった。また、大会ごとに応援ビデオを作成した。リオ五輪には、社員に加えて金藤の地元の友人、家族のメッセージも入った10分以上の超大作を送り励ました。

 海外の大会に同行したこともある小菅智子さん(43)は「私の夢もかないました。結果が出ずに悩む姿をずっと見てきたので本当にうれしい。帰国したら好物の甘い物をたくさん食べさせてあげたい」と笑顔。

 金藤を支えた“家族”たち。その手厚い応援を燃料とし、下町から金色に輝くロケットがリオの空に打ち上がった。

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2016年8月13日のニュース