【ジャパンC】国枝師 アーモンドアイいざラストランへ「もう少し夢を見させて」

[ 2020年11月29日 05:30 ]

最高の有終舞台(6)

8冠を達成したアーモンドアイについて「夢を見させてくれた愛馬」と記した国枝師(撮影・西川祐介)
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 アーモンドアイとは、「夢を見させてくれた愛馬」――。そう達筆でしたためた国枝栄師(65)は、照れ笑いを浮かべた。「芝G1・8勝の新記録を達成できて、正直、肩の荷が下りた。アーモンドにはたくさんの経験をもらった。こんな馬に出合えて本当に幸せ」

 愛馬と駆け抜けてきた夢中の4年間。船出前から特別なものになる確信があった。「デビュー前、調教の動きを見て“この馬は違うな”と思った」。新馬戦こそ敗れたが、初勝利から破竹の7連勝。師は一番の思い出にその7勝目、ドバイターフを挙げる。

 自身初の海外G1制覇の裏で驚いたのは外国メディアの取材攻勢。その熱量に「世界からこれだけ注目される馬なんだと改めて実感した」。密着カメラに加え、レース中にもマイクを向けられる。「勝つと思っていたけど、注目された分、余計にうれしかった。日本と違ってゆっくりレースを見られなかったけど、いい思い出だよ」と笑う。

 引退が近づくにつれ、「無事に繁殖に上げることも調教師の使命」と口にすることが増えた。ホースファーストの師。名血をつなぐ重要性は誰より分かっている。「丈夫な馬だから」と言うが、アーモンドはいつも全力。時にはレース後にふらつくこともある。丁寧で、細心のケアが大きな故障を未然に防いできたに違いない。「無事に引退して、順調に出産できれば、最初の子供は(70歳の定年前に)ぎりぎり育てられるかな」。最短で24年にデビューを迎える産駒の話になると、顔がほころんだ。

 ラストランには日本競馬史上最高のレースが用意された。「さまざまなカテゴリーの最強馬が一緒に競馬するのはホースマンの夢」。世紀の一戦に胸が躍るのはファンだけではない。「負けないところ?2400メートルを一番速く走れること。世界レコード(2分20秒6)を出したジャパンCがこの馬のベストパフォーマンスだった。もう少し、いい夢を見させてくれるんじゃないかな」。最強は、最高の夢を見させてくれた愛馬。そう信じて、送り出す。

 ≪海外初遠征でV≫▼19年3月30日 ドバイターフ アーモンドアイにとって初の海外遠征、初のナイター競馬。スタートを決め、道中は中団外めを追走。直線に入ると抜群の手応えで進出を開始し、残り300メートル付近で楽々と先頭に。鞍上のルメールには後ろを振り返って確認する余裕さえあった。最後は食い下がるヴィブロスを抑えて完勝。国内では単勝1・2倍の圧倒的支持に応え、国枝師は「夢が膨らんだ」と笑顔で語った。

 ◆国枝 栄(くにえだ・さかえ)1955年(昭30)4月14日生まれ、岐阜県出身の65歳。東京農工大卒業後、美浦・山崎厩舎の調教助手を経て、89年調教師免許取得。10年アパパネ、18年アーモンドアイで2度の牝馬3冠を達成。他にもブラックホーク、マツリダゴッホ、ピンクカメオ、マイネルキッツとG1馬を多数育て上げた。思い出のレースは19年・ドバイターフ。

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2020年11月29日のニュース