舟木一夫の世界・その2 「高校三年生」は「お客さまの歌」
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【牧 元一の孤人焦点】歌手の舟木一夫(76)が12月3日から東京・新橋演舞場で特別公演を行う。舞台「壬生義士伝」とシアターコンサートの2部構成。コンサートでは、1963年のデビュー曲で大ヒットした「高校三年生」(丘灯至夫さん作詞、遠藤実さん作曲)などの歌唱が期待される。
──コンサートにはコロナ禍の社会情勢が反映するものですか?
「影響されることはないです。僕はステージで『コロナ』という言葉を使ったことがない。お客さまがせっかく劇場やコンサートホールまで来て、いちばん聞きたくない言葉が『コロナ』でしょう。日常と非日常を分ける。僕は常に、非日常の所に立っていなければ、だめなんですよ。現役の間は非日常の存在でいないと」
──非日常の中で歌われる「高校三年生」をファンは強く求めていますね。
「お客さまは『高校三年生』を歌うのが舟木一夫じゃないとだめなんです。これは、上から目線で言っているわけじゃない。流行歌とは、そういうものなんです。『有楽町で逢いましょう』はやはりフランク永井さんの歌で聴きたい。歌い手は、歌の作り手と聞き手のパイプです。年老いて声が半分しか出ないとしても、その人の歌がいい。声がよく出る現役の高校三年生が『高校三年生』を歌ってもだめなんですね」
──これまで、どのような思いで「高校三年生」を歌ってきたのですか?
「大ヒットが出ると、どんな歌い手でも、10年くらいたてば、その歌から離れたいと思うものです。僕も、25歳くらいの時にそう思いました。『オレはこれしかできないわけじゃない』と言いたくなるんです。『これでいい』と思えるようになったのは、50歳近くになってからですね。流行歌の本質が分かったら、意外に納得できた。流行歌は『お客さまの歌』です。『オレはもう、それを歌う年齢じゃない』と言うわけにはいかない。幸か不幸か、『高校三年生』はものすごかった。あの歌は、お化けですから」
──お化けですか!?
「ある世代にとって、青春のかたまりの『世代の歌』ですね。たまたま舟木一夫が歌う側にいただけです。自分の持ち歌という小さな枠で収まる歌じゃない。『ギャラをいただいている手前、私が歌いますね』という感じです」
──同じ歌でも時間の経過とともに変わるものですか?
「ものすごく変わります。僕の思いも変わるけれど、お客さまの思いも変わる。みなさん、滑ったり転んだり泣いたり笑ったりしながら、ここまで歩いてきた。『高校三年生』がヒットしていた時の地球儀と今の地球儀は全く違う。40代は40代なりに、70代は70代なりに変わります」
──これからの目標をどのように考えていますか?
「来月、77歳になります。77歳で1カ月間、生で歌え通せたら、そこで自信がつくと思います。その次の目標が80歳で、そこでコンサートができるようなら、82歳の時の65周年が見えてくる。いきなり5年先にハードルを置いても走れないので、その前に必要なものを一つずつクリアして行きます」
77歳の歌い手が「高校三年生」を歌う。メルヘンのようでもあるが、ファンはそれにこそ、かけがえのないリアリティーを感じる。とても興味深く、音楽好きの1人として、うらやましい世界だ。77歳はもちろんのこと、82歳の「高校三年生」を聴きたい。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。
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