「半沢直樹」創造力あふれる現場 名場面「さあ、さあ」は堺雅人のアイデア 佃典彦も「肩つかんで」に感謝

[ 2020年9月20日 09:30 ]

日曜劇場「半沢直樹」第9話。スマートフォンを手に相手をにらみつける半沢(堺雅人)(C)TBS
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 俳優の堺雅人(46)が主演を務め、今夏ドラマの話題を独占しているTBS日曜劇場「半沢直樹」(日曜後9・00)も20日放送の第9話と最終回の残り2回。ヒール役の“顔芸”や存在感が大反響を呼んでいるが、歌舞伎の常套句を用いた第7話の名場面など、作品を牽引している座長・堺のアイデアやアドリブも共演者が証言。創造力あふれる撮影現場の様子が垣間見えた。

 今月6日にオンエアされた「生放送!!半沢直樹の恩返し」。第7話(8月30日)、主人公・半沢と宿敵・大和田が審査部次長・曾根崎(佃典彦)を挟み、相手を問い詰める際に用いる「繰り上げ」という歌舞伎の常套句「さあ、さあ」で迫ったシーンの秘話を堺と香川照之(54)が明かした。

 香川「台本には、僕の台詞として『さあ、さあ』とあったんですが、僕はそれ(歌舞伎の常套句)にしか読めないわけですよ。これ、どうやって、そういうふうに言おうかなと思って現場に行ったら」

 堺「『さあ』1個、欲しかったんです。『さあ』1個、交ざりたかったんですよ」

 香川「堺さんは日本舞踊の『吉野山』を踊られたり、歌舞伎もよくご覧になっているんですよ。歌舞伎の(台詞)の割り方を分かっていらっしゃるので、『さあ、さあ』(を2人で)割りましょう、と。僕が前の日に思っていたのと同じ。本来は詰め寄る側と詰め寄られる側で割るのを、味方同士で割るという斬新な(演出)。これ、堺さんのアドリブです」

 堺「1個『さあ』が欲しかったんです。僕も僕の『さあ』があって、大和田は大和田の『さあ』があって(曾根崎を)詰めていくとおもしろいかなぁと思って」

 香川「詰め寄る間も堺さんが全部、分かっていてくださって」

 堺「いえいえ、香川さんが全部、指導してくださって」

 香川「これは本当に堺さんのアイデア。もっと言います、もっと言うぞ(笑)。(第6話、8月23日)(大和田の)『(業務改善命令を出されたら)うちは沈没だよ!銀行沈没!頭取も(下唇を噛むように)沈没(沈ヴォツ)!』のイスの座り方も堺さんのアイデア。『それ、頂きます』と」

 謙虚に照れ笑いを浮かべる堺が印象的だった。

 今月12日に東京・新国立劇場中劇場で行われた「感謝の恩返しスペシャル企画 朗読劇『半沢直樹』」のトークショー。佃典彦(56)が観客からの質問「撮影中の一番心に残るエピソード」に答えた。

 第6話、前を歩いている半沢に、曾根崎が「おまえ、タスクフォースにケンカ売ったらしいな。現職の大臣(白井国交相)が直々に(銀行)乗り込んでくるなんて、前代未聞だぞ!」と後ろから肩をつかみ「いいか、半沢。すべて私が悪うございました。これが大臣に言うべき言葉だ。いいな」と圧力をかける場面。

 佃「僕は撮影の2日目で、まだ現場に入り込めない雰囲気が満載だったんです。堺さんは姿勢がいいし、腰からスススッと廊下を歩かれるので、速くて全然追いつかなくて(笑)。廊下の突き当りまででシーンを終えないといけないので『どうしよう』と思っていたら、堺さんが『僕の肩をつかんでください。そうしたら、止まりますから』とおっしゃっていただいて、あのシーンにできたんですが、カットがかかってホッとしていたら、堺さんが来られて『先ほどは差し出がましいことを申し訳ございませんでした』って言うのよ(笑)。『いやいや、とんでもございません』って。非の打ち所がないとは、このことです」

 堺が「とにかく台詞を間違えない」ということも、共演者が度々証言。「座長が間違えないのだから、自分も」という緊張感を生む一方、アドリブがクリエイティブな現場。

 以前も紹介したが、主演の務めた16年のNHK大河ドラマ「真田丸」の際、三谷幸喜氏(59)の脚本やキャラクターに対する堺の深く鋭い理解、その洞察力には何度も驚かされた。

 人質として秀吉に仕える「大坂編」(第14回~第31回)を「コネ入社の楽しいサラリーマン生活」と例えたかと思えば、「大坂の陣編」は「市役所の課長さんクラスがこんな感じなのかなと。任された現場でトラブルや非常事態が起きて、上との連絡が途絶え、その時に現場の最高責任者として決断するという状況が一番近いと思いましたね」と表現。第45回「完封」で徳川の大軍と対峙し「我こそは真田左衛門佐幸村!」と自らの名を轟かす場面も、堺が意識したのは実務者としての顔。「自分の名前を名乗るというよりは『何とか警察の何とかです。止まりなさい』『何とか市役所土木課です。そこの車両止まってください』みたいな実務指示ですね。名乗って、そこに止まらせるというような気持ちで演じていました」と実に分かりやすく明かした。堺の話は、実に楽しい。

 (※以下、ネタバレ有)

 圧巻だったのは、最終回のラストシーンの解釈。大坂夏の陣(慶長20年、1615年)、家康(内野)を仕留め損ね、安居神社に逃れた幸村(堺)だったが、追手の徳川兵に囲まれ「ここまでのようだな」と自害を決意。佐助(藤井隆)に刀を手渡す…。

 「美学として死ぬというよりは、相手に首を取られると、それだけ相手の作戦が立てやすく、実行しやすくなります。幸村が死んだと分かれば、徳川は幸村に割く兵力を削減できるので。相手に首を取られるというのは作戦上、よくないわけです。自分の首を取って逃げる佐助の体力の温存具合を見計らいながら、どうやらここがギリギリだから、ここまで来たら佐助に首を取って逃げてもらった方が作戦上よろしかろうという非常に現実的な選択だと思うんです。幸村の生死を曖昧にした方が、豊臣にとっては戦略的に有効なわけで。だから『ここまでのようだな』というのは決して美学として言っているわけではなく、最後の最後まで職務をあきらめず、最後の最後まで職務を全うしたセリフだと思うんです」

 たった1つの台詞に、これほどの背景があった。

 しかし、単なる“頭でっかち”とは違う。「真田丸」のチーフ演出を担当した木村隆文氏は「理と情のバランスが素晴らしい人。堺さんはいったん頭で役を構築した上で、自分の作り上げたプランと違う芝居を相手の役者さんがしたり、違うオーダーを演出家がしたりしても、そこに柔軟に対応してくださる。凄いと思います。実際に現場に立って初めて湧く感情もあるわけで、それもその場その場で軌道修正するといいますかね、決して頭で考えたことだけに固執しない、本当に柔軟な方だと感心しました。主役の膨大なセリフも全部、事前に入っているんだと思います。待ち時間も、あまり楽屋に戻らず(スタジオ前の)前室にいることが多く、モニターで共演者の方の演技を見て『いい芝居するなぁ』と笑って、みんなと雑談したり。作品全体や共演者のことを考えた振る舞いは、座長として素晴らしかったです」と“現場対応力”も称えた。

 圧倒的な脚本解釈とクリエイティブな撮影現場から生まれるアドリブの融合。「半沢直樹」における堺の演技は、あと2回。心底、堪能したい。(記者コラム)

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