備忘録3

[ 2020年8月13日 08:00 ]

6月8日の第91期棋聖戦五番勝負第1局で、勝利後インタビューに答える藤井聡太七段(右)。渡辺明棋聖の横には青いクーラーボックスが(日本将棋連盟提供)
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 【我満晴朗のこう見えても新人類】

 ☆6月8日 対渡辺明棋聖(第91期棋聖戦5番勝負第1局=東京・将棋会館)

 先手の藤井聡太七段(当時)が157手で勝利。最終盤は渡辺の鬼気迫る王手ラッシュをひらりひらりとかわし、フィニッシュは見事な逆王手だった。

 番勝負出場を決めたのが4日だから、なんと中3日。通常のタイトル戦では開幕局の約1カ月前に挑戦者が決定するシステムとなっている。対局記念グッズやイベント告知ポスターを製作するため最低限必要な期間だからだ。しかし今回の棋聖戦は例年の日程を踏襲したため、挑戦者決定から異例の中3日での開催。会場も前年までの各地転戦ではなく東西の将棋会館がメインだ。感染対策で対局前日の前夜祭はもちろん大盤解説は中止。普段慣れ親しんだ対局場を使用するため検分すらない地味なシリーズとなってしまった。

 その一方で楽しみにしていたのが藤井の和服姿だった。一般棋戦では前年(19年)8月のJT杯で初披露しているが、今回はタイトル戦。JT杯では将棋界だけの話題にすぎなかったが、今回の注目度はケタ違いだ。筆者も気合を込めて早起きし、対局1時間半前には将棋会館入りして「その時」に備えていた。

 あれ?

 特別対局室の下座に着いた藤井は、いつも見慣れているスーツ姿ではないか。

 藤井自身は和服を数枚保持している。だがこの日着用しなかったのは理由があった。挑戦決定後からの日数が少なく、着慣れない状態は避けようという意図だったと局後の会見で明かしている。なんとも冷静だ。過去には同じような状況で郷田真隆九段や羽生善治九段がスーツ着用でタイトル戦に挑んだことがある。加藤一二三・九段や島朗九段も和服を着ないことで有名だった。そんな「前例」も参考にしたのだろう。周囲の熱気に左右されず、冷静に状況を判断してトラブルの可能性を排除したことになる。沈着さが光る17歳だ。

 対戦相手の渡辺。青いクーラーボックスを持参し、冷たい飲み物を次から次へと出しては補給するという「新手」を見せた。快適に指すための環境を自らの手で用意する。このあたり渡辺らしさが全開だった。件のクーラーボックスを見て「Uber Eats」を連想したのは筆者だけかも。(専門委員)

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