漫画がつくった?戦後の“開かれた皇室”

[ 2019年5月11日 09:00 ]

園遊会で、天皇陛下との思い出について語った里中満智子さん
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 改元に関する一連の企画で、漫画家の里中満智子さんを取材した。天皇、皇后両陛下や上皇ご夫妻らの人柄やエピソードを探る取材の一環で、里中さんが2010年秋の園遊会に招かれ、上皇さまから声掛けされたと聞いて取材を申し込んだ。

 「アリエスの乙女たち」などで知られ、1960年代から一線で活躍し続ける里中さん。園遊会に招待されるに十分な実績を持つが、持統天皇を主人公とする「天上の虹」など飛鳥・奈良時代の皇室を描いた著作が多いのも招待された理由だったかもしれない。

 里中さんによると、ただでさえ歴史漫画は「作者なりの解釈や想像を交えるため、子孫の方に会うのは緊張する」そうだ。それがましてや上皇さまとなれば…。当日のことは「凄く緊張していて、よく覚えていない」という。

 上皇さまは、里中さんとの会話で持統天皇や孝謙天皇を描いていることに触れたそうだ。「まず、自分の作品をご存じなことに驚いた」という。そして語り口からは「遠い昔、天皇として苦労された方々を敬愛するお気持ちが伝わってきました」と振り返った。

 とりわけ持統天皇は、皇位をめぐる政争から“悪者”のイメージで語られがちで、物語の主人公となることも少ない。「そんな背景もあって、陛下は私の漫画を気に掛けて下さったのかもしれませんね」と、上皇さまの思いを想像した。

 上皇さまが「天上の虹」を愛読されていたかは分からない。この日のために事前説明を受けた可能性もあるからだ。

 ただ、この日来られていた“ある女性皇族”からは「『天上の虹』の続きはいつですか?楽しみにしてますよ」と期待の言葉を掛けられたそうだ。

 「天上の虹」は1983年から始まり、当時は執筆のペース落ちていた頃だという。「まさか皇族の方から締め切りの催促があるとは…。反省しました」と里中さんは苦笑い。それから5年後の2015年に完結させている。

 皇室の方々が、漫画やアニメについて感想を語られることは滅多にない。だが、我々の想像以上に親しまれているのかもしれない。

 秋篠宮さまは少年時代に「釣りキチ三平」がお気に入りだったという。2001年、滋賀県で行われた世界湖沼会議のレセプションで、作者の矢口高雄氏に「魚紳さんが好きでした」と、主人公の兄貴分キャラクターの名を挙げて語られたそうだ。

 天皇陛下、秋篠宮さま、お二人とも「あしたのジョー」と「巨人の星」がお好きだったとも聞く。

 皇族の方々が国民の心を揺さぶる漫画文化に親しみ、国民との距離を縮めることで、戦後の“開かれた皇室”がつくられたのかもしれない…などと想像してしまった。(記者コラム) 

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