王将戦・戦国時代(6) 郷田九段王将奪還へ “家康魂”で熱き闘志燃やす

[ 2018年10月3日 18:00 ]

徳川家康に扮する郷田真隆九段(撮影:浦田 大作)
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 将棋の第68期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の挑戦者決定リーグ戦が開幕した。昨期の残留4人に加え、予選を勝ち抜いた3人の計7者による、棋界で最もハードな総当たり戦。果たして久保利明王将(43)に挑む権利を手にするのは…。参加7棋士に加え、7番勝負で挑戦者を待ち受ける久保王将の8人が戦国武将に扮(ふん)し、それぞれ心境を語った。全8回の連載をお送りする。

 徳川家康の甲冑(かっちゅう)に身を包んだ郷田は開口一番「家康公がいなければ今の将棋界があるか分からないですから」と熱っぽい。

 将棋・囲碁を愛した徳川初代将軍が大橋宗桂らに俸禄(ほうろく)を支給し始めたのは1612年。以降400年にもわたり、棋士が職業として成り立っている。「生活が安定しなければ将棋に打ち込めない。(家康には)そういう環境をつくっていただいた」。感謝の気持ちがこもっている。

 棋界随一の長考派として知られる郷田の心境は「鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス」とどこかで通じているのだろう。記憶に新しい15年(第64期)7番勝負で渡辺明王将(当時)と対峙(たいじ)した第1局には2時間25分に及ぶ大長考。この対局は落としたもののシリーズは4勝3敗で制し、王将戦史上最年長の44歳0カ月でタイトルを手にしている。

 なぜ、そこまで長考にこだわるのか。10代半ばの修業時代は力任せに指して最後は勝てればいいという将棋だったが「それが通用しないと分かったんです。ちゃんと一手一手に意味があるんだと」。例えとして建築物を挙げた。「きちんと土台、基礎から建てた家と、なんとなく建っちゃった家とは違うわけで」。どんなに細かい部分でも手を抜かず、それぞれに確固たる理由がなければ何十年も持つ家は築けない。将棋も同じだ。何げない序盤の一手でも、なぜそれなのか、理由は必ずある。それを一つ一つ確認しながら指しているので、時間を消費せざるを得ない。

 81マスの小宇宙と称される無限の世界にあって、常に真理を探究する求道者の姿がそこにはある。だからこそ、なのか。「一生懸命考えたことのない人というのは、ボクから見るとそんなに怖い相手ではない」と言い切った。

 久保利明王将(43)に失冠してから2年。「力を出し切れないで負けたのが心残り。王将戦は最も思い入れがあるタイトルなので、やるしかないなという気持ちです」。リーグ戦参加最年長棋士の気持ちは依然として熱い。(我満 晴朗)

 ◇郷田 真隆(ごうだ・まさたか)1971年(昭46)3月17日生まれ、東京都出身の47歳。90年に四段昇段し、92年は王位を奪取。四段での戴冠は史上初だった。通算タイトルは6期。1メートル72。

 このインタビューの全文はlivedoor NEWSに掲載される。

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